臨床心理士の資格とは?資格の取り方から仕事内容・年収、やりがい等を簡単に解説!

臨床心理士の仕事女性の仕事・資格

みなさんは臨床心理士と聞くとどんな仕事をイメージしますか?

「学校の相談室にいる人」「カウンセリングをしてくれる人」というイメージでしょうか?

臨床心理士は、悩みの多い現代人を支えるためさまざまな場所で活躍しています。ここでは、臨床心理士の仕事内容やなり方、やりがい、年収について解説していきます。

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臨床心理士とは?

臨床心理士とは、心に問題を持つ相談者に対して、臨床心理学に基づく知識や技術を用いて問題の解決へと導く心理学の専門家です。医療、教育、福祉、大学、産業などさまざまな分野で活躍しています。

臨床心理士になるためには日本臨床心理士資格認定協会認定の資格試験に合格しなければなりません。

2018年4月時点では32,354人の臨床心理士の有資格者が存在しています。

臨床心理の仕事は資格がなくても行うことができますが、心理学の専門家である証として資格が役立ちます。心理学には多くの民間資格がありますが、その中でも臨床心理士は知名度、難易度、信頼度の高い資格であると言われています。

臨床心理士の資格を取るには

臨床心理学の資格を取るには、高校卒業から最低でも6年の期間が必要になります。

資格を取るまでのルートと、試験の内容を確認していきましょう。

臨床心理士になるまでのルート

臨床心理士として働くためには、指定された大学院修士課程を修了後、年1回実施される日本臨床心理士資格認定協会認定の試験に合格しなければなりません。資格取得までのルートを以下の図に示します。

臨床心理士 資格受験ルート

出典:一般社団法人日本臨床心理士会 http://www.jsccp.jp/person/dream.php

指定大学院とは、日本臨床心理士資格認定協会が臨床心理士養成のための教育課程として指定する大学院のことです。指定大学院には第一種と第二種があり、以下のような違いがあります。

<第一種と第二種の違い>

第一種大学院第二種大学院
国内数160校(2019年7月時点)8校(2019年7月時点)
教員数臨床心理士有資格者5名以上臨床心理士有資格者4名以上
施設学内に実習施設がある学内に実習施設がない場合もある

専門職大学院は、研究を行うことが前提の通常の大学院とは違い、専門職を養成することを目的としています。通常の大学院よりも最低実習時間が多く修士論文を書く必要がありません。専門大学院は2019年7月時点で全国に6校あります。

上記で示したルートの他に、

・海外で指定大学院と同等以上の教育歴+日本での心理臨床経験2年以上

・医師免許+心理臨床経験2年以上

を満たす場合も臨床心理士試験の受験資格が与えられます。

参考:公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会http://fjcbcp.or.jp/shinrishi/

臨床心理士資格試験の概要と合格率

臨床心理士の資格試験は毎年2,000人以上が受験しています。試験の概要は以下の通りです。

<臨床心理士資格試験>(2020年1月時点の情報)

一次試験二次試験
試験日程10月中旬11月中旬
試験会場東京東京
費用資格申請書類:1,500円

資格審査料:30,000円

合格後の登録料:50,000円

試験方法筆記試験(選択式+論述)面接
試験内容臨床心理査定、臨床心理面接、臨床心理的地域援助、臨床心理士に関する倫理・法律など一次試験の選択問題通過者に対し、2名の委員が面接を行う。臨床心理士としての基本的な姿勢や態度、専門家としての人間関係能力が問われる。
合格率60~65%前後

一次試験は100問の選択問題と1,001~1,200字の論述問題で、合計4時間の試験です。一次試験の選択問題が一定の水準を満たしている場合のみ、二次試験を受けることができます。試験合格後に日本臨床心理士資格認定協会に所定の手続きをすることで、臨床心理士として認められます。

高校卒業後、大学+大学院で最低でも6年の期間を必要とする上、決して油断できない合格率なので、臨床心理士になるためには高い志が必要です。

公認心理師との違いは?

公認心理師は、臨床心理士と同様に心の問題を解決するサポートをする職業で、2018年にスタートした心理学分野で唯一の国家資格です。国家資格ではありますが、名称独占資格なので公認心理師でなければできない業務はありません。

どちらも心理学の専門家ということで、必要な知識や業務内容には共通点が多くありますが、仕事内容の一部には以下のような違いもあります。

  • 臨床心理士:心理学の調査や研究を行う。
  • 公認心理師:心理学の普及のための教育や情報提供を行う。

心理学の追究を目的としている臨床心理士に対し、公認心理師はチーム援助や連携を目指し教育や情報提供を行います。公認心理師は始まったばかりの新しい国家資格なので線引きがあいまいな部分もありますが、今後は少しずつ役割が明確化していくと予想されます。

臨床心理士の仕事内容

臨床心理士は臨床心理学に基づく知識や技術を用いて心の問題を解決していく専門家です。精神病患者やストレスによって塞ぎこんでしまった人、学校生活に問題を抱える子どもなど、自分では解決が難しい問題を抱えた人を対象とします。日本臨床心理士資格認定協会では、臨床心理士の専門業務を以下の4種類に定めています。

臨床心理査定

心理テストや観察面接を通じて、相談者の特徴や独自性、問題の所在を明らかにします。その後、相談者の状況を考慮しながらサポート方法の検討や他の専門家との連携を行います。

臨床心理面接(カウンセリング)

相談者の特徴に応じて、さまざまな臨床心理学的技法を用いて問題の解決や精神の回復援助を行います。臨床心理学的技法には、心を分析することで精神疾患を治療する精神分析や、数名のグループでの話し合いや行動を治療に役立てる集団心理療法などさまざまな方法があります。

臨床心理的地域援助

専門性を活かし、地域住民や学校、職場に所属する人の心の健康をサポートします。また、生活環境の健全な発展を目指し、心理的情報の提供なども行います。

臨床心理学に関する調査・研究

対人支援活動を行うときには、根拠に基づく技術的な手法や知識を用いたサポートが必要になります。そのため、問題を解決するための知識と技術の発展を目指し、幅広い研究活動や調査を行うことが求められます。

臨床心理士の就職先

臨床心理士はその専門性を活かしさまざまな分野で活躍することができます。2015年に行われた臨床心理士動向調査によると、臨床心理士の就労分野は以下のようになっています。

臨床心理士 就職先

出典:第7回 臨床心理士の動向調査 https://www.jsccp.jp/member/news/pdf/doukoucyousa_vol7.pdf

<就職先の具体例>

  • 医療・保健:病院や診療所などの精神科、心療内科、保健所、精神保健福祉センター
  • 福祉:児童相談所、老人福祉施設
  • 教育:小中学校や高校のスクールカウンセラー、教育センター
  • 大学・研究所:大学の研究室、学生相談室
  • 司法・法務・警察:刑務所、警察署の被害者窓口
  • 産業・組織・労働:企業の健康管理室、法務、総務
  • 私設心理相談:臨床心理士としての開業

臨床心理士のやりがい

臨床心理士は心の問題を持つ人を対象とするため、楽しいだけの仕事ではありません。時には臨床心理士自身が「気をもらう」ことやストレスを抱えることもあります。しかし楽ではない分、やりがいや喜びも大きな仕事です。

人の心に寄り添い問題を解決できる

臨床心理士の使命は、自分では解決が難しい問題を抱えている相談者に対してカウンセリングや治療を行い解決すること。うまくいけば、ストレスにより社会に適応できなくなった人や塞ぎこんでしまった子どもなどが回復していく様子を見守ることができます。相談者が元気になって生活している姿を見られることは非常に大きなやりがいとなるでしょう。

客観的視点や探究心が養われる

臨床心理士は「人を助けたい」という感情だけではやっていけません。専門知識や技術を用いながら、客観的視点で問題を解決していく能力が求められます。そのため、資格を取った後も常に知識と技術の向上に努める必要があります。何かを突き詰めることが好き、専門科だからこそできるカウンセリングをしたいという思いが強い人ほど、大きなやりがいを感じられるでしょう。

臨床心理士の年収

2015年に行われた臨床心理士の動向調査によると、臨床心理士の年収は300万円台が19%、200万円台が16.5%、400万円台が15.5%となっています。

平均年収は300~400万円程度であると言われています。

参考:第7回 臨床心理士の動向調査 https://www.jsccp.jp/member/news/pdf/doukoucyousa_vol7.pdf

臨床心理士の将来性

近年では、職場、学校、家庭など心の問題を抱えるきっかけが多様化しているため、臨床心理士の活躍の場も拡大しています。スクールカウンセラーの増加や高齢化による介護問題、離婚率の上昇といった社会的背景からも、今後臨床心理士によるサポートを必要とする人が増えていくと予想されます。

しかし、2018年に公認心理師の国家試験が始まったことから、臨床心理士はどのような立ち位置に変わるのか、どのように棲み分けるのかなど不明瞭な点が多いのも事実です。心理学のプロとして働きたいならば、臨床心理士だけでなく公認心理師の資格取得も考えておいた方が選択肢は広がるでしょう。

臨床心理士は民間資格の中では信頼度の高い仕事!

臨床心理士は、医療、福祉、教育などさまざまな分野で活躍する心の専門家です。臨床心理士になるためには、指定の大学院を修了後、日本臨床心理士資格認定協会が認定する試験に合格しなければなりません。資格取得には高校卒業から最短でも6年かかりますが、それだけ専門性が高く信頼度の高い資格と言えます。

2018年には心理学分野で唯一の国家資格、公認心理師が誕生しました。現時点では臨床心理士との棲み分けが不明瞭な部分もあるため、臨床心理士を目指す人は公認心理師もチェックしておきましょう!