みなさんは福祉用具専門相談員という職業をご存じでしょうか?
介護に関わったことのない人はあまりイメージできないかもしれませんね。今回は、福祉用具専門相談員の仕事内容やなり方、やりがい、年収について解説していきます。
福祉用具専門相談員とは?
福祉用具専門相談員は、福祉用具をレンタル・販売するときに、高齢者や介護を行う家族に対し適切な選び方や使い方をアドバイスする専門職。介護保険制度の指定を受けている福祉用具販売・レンタル店では、2名以上の常勤福祉用具専門相談員の配置が義務付けられています。
介護において欠かすことのできない福祉用具ですが、非常に種類が多く時代とともに進化しているため一般の人はあまり選び方や使い方が分かりません。また、利用者に福祉用具が合わなかったり、間違った使い方をして身体的・精神的負担をかけることもあります。
福祉用具専門相談員は、そのようなことがないように利用者や介護を行う家族にとって適切な福祉用具を選定し、レンタル・販売をする役割を担っています。
ケアマネジャーとの役割の違いとは?
ケアマネジャーとは、介護保険制度に基づいて利用者に最適なケアプランを作成する職業。福祉用具専門相談員は、ケアマネジャーから依頼を受けケアプランに沿った福祉用具の選定を行うことも多くあります。
利用者にフォーカスしケアプランを作成するケアマネジャーに対し、福祉用具専門相談員は、その中で介護に必要な福祉用具に特化したサポートを行います。
ケアマネジャーの試験を受けるには、
- 指定の国家資格を持ち5年以上かつ900日以上の実務経験
- 生活相談員・相談支援員等として5年以上かつ900日以上の実務経験
という受験資格が必要ですが、福祉用具専門相談員は、指定の講習を修了後に福祉用具の現場で「相談援助業務」を5年以上行うことで、②の条件を満たすとみなされケアマネジャーの受験資格が与えられます。
そのため、福祉用具専門相談員からケアマネジャーの資格取得を目指す人も少なくありません。
ケアマネジャーの仕事内容やなり方については以下の記事をチェック!
ケアマネージャー(介護支援専門員)の資格とは?資格の取り方から仕事内容・年収、やりがい等を簡単に解説!
福祉用具専門相談員の資格を取るには
福祉用具専門相談員になるためには、どんな条件をクリアしなければならないのでしょうか?ここでは、福祉用具専門相談員になるための2つの方法を紹介します。
福祉用具専門相談員指定講習を受講する
福祉用具専門相談員になるための代表的な方法は、都道府県知事の指定を受けた研修事業者が実施する「福祉用具専門相談員指定講習」を受講し、評価試験を受けることです。
<福祉用具専門相談員指定講習の概要>
受講資格 | なし |
講習時間 | 50時間(おおむね6~8日間) |
講習日程 | 研修期間により異なる |
講習会場 | 全国の研修期間 |
費用 | 35,000~70,000円 |
講習内容 | l 福祉用具の役割(1時間) l 福祉用具専門相談員の役割と職業倫理(1時間) l 介護保険制度等の考え方と仕組み(2時間) l 介護サービスにおける視点(2時間) l からだとこころの理解(6時間) l リハビリテーション(2時間) l 高齢者の日常生活の理解(2時間) l 介護技術(4時間) l 住環境と住宅改修(2時間) l 福祉用具の特徴(8時間) l 福祉用具の活用(8時間) l 福祉用具の配給の仕組み(2時間) l 福祉用具貸与計画等の意義と活用(5時間) l 福祉用具による支援の手順と福祉用具貸与計画等の作成(5時間) |
試験内容 | 習熟度を測るための筆記による評価試験 |
合格点 | 非公開 |
50時間の講習後には試験がありますが、これは落とすためではなく習熟度を確認するための試験なので、難易度はかなり低く合格率はほぼ100%と言われています。
講習は全国の研修機関で受けられますが、場所によって日程や費用が異なるため、詳しくは一般社団法人全国福祉用具専門相談員会のホームページから近くの講習会場を確認しましょう。
参考:一般社団法人全国福祉用具専門相談員会http://www.zfssk.com/qa/index.html
専門的資格を保有する
指定の講習を修了していなくても、以下の専門的資格を保有している場合は、福祉用具に関する知識があるとみなされるため福祉用具専門相談員として働くことができます。
- 保健師
- 看護師/准看護師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 社会福祉士
- 介護福祉士
- 義肢装具士
ただし、2015年4月1日の制度変更により以下の資格者は福祉用具専門相談員の業務ができなくなったので注意しましょう。
- ホームヘルパー2級・1級
- 介護職員基礎研修
- 初任者研修
福祉用具専門相談員の仕事内容
福祉用具専門相談員は利用者や家族に適切な福祉用具の選定や使い方のアドバイスをする職業です。具体的な仕事内容については、一般社団法人全国福祉用具専門相談員会ホームページにて以下のように記載されています。
相談選定 | ご利用者の心身の状態や使用環境などから、福祉用具で解決できることを一緒に考え、一人ひとりにあった福祉用具を選ぶお手伝いをします。 |
計画作成 | 相談内容にもとづき、福祉用具の利用計画(福祉用具サービス計画)を立てます。 |
適合・取扱説明 | ご利用者のからだの状態や使用環境に合わせ、福祉用具の調整をおこないます。また、福祉用具を安全かつ有効に使っていただけるよう、取り扱いについて説明します。 |
訪問確認(モニタリング) | 定期的にご利用者宅を訪問し、福祉用具の点検や使用状況の確認などをおこないます。 |
引用:一般社団法人全国福祉用具専門相談員会
福祉用具専門相談員の仕事内容は以上のように決められていますが、時代とともに福祉用品は進化しておりより専門的な知識が求められるようになってきています。また、実際には福祉用具専門相談員としての仕事の他に新規開拓や販売促進活動などの営業職、介護職を兼務することも多いようです。
福祉用具専門相談員の就職先
福祉用具専門相談員の主な就職先は福祉用具販売・レンタル店ですが、その他にもさまざまな場所で活躍しています。ここでは福祉用具専門相談員の就職先とその仕事内容を紹介します。
福祉用具販売・レンタル店
福祉用具の販売やレンタルを行う事業所では2名以上の福祉用具専門相談員を配置することが義務付けられており、ここでは利用者や家族に用具の選び方や使い方のアドバイスを行います。車で自宅に訪問するため普通自動車運転免許を応募条件としている場合が多く、新規開拓や販売促進活動などの営業職を兼務する職場も少なくありません。
介護施設
介護施設では、主に食事動作を助ける食器の導入、入浴用リフトのメンテナンス、杖や車椅子の管理などを行います。また、施設内の介護職員に対し福祉用具の説明を行ったり、退院に向けた準備や家族への指導を行うこともあります。福祉用具専門相談員として介護施設で働く場合、施設内の介護職と兼務している人が多いようです。
ドラッグストア・生活用品販売店
近年、ドラックストア、スーパーやホームセンターの介護福祉用品売り場など、福祉用具を扱う店舗が増えてきました。福祉用具を買い求める人により正確で詳しい情報を提供するため、福祉用具専門相談員を採用している店舗もあります。
その他
福祉用具専門相談員は、その専門知識を活かして住宅リフォーム関連会社や介護用品メーカーに就職することも可能です。住宅リフォーム関連については、「福祉住環境コーディネーター」の資格を持っていることでより優遇されるでしょう。
福祉用具専門相談員のやりがい
福祉用具を通して介護業界を支える福祉用具専門相談員には、次のようなやりがいや魅力があります。
他の仕事と兼任することで知識の幅が広がる
福祉用具専門相談員は介護職や営業職、販売職などと兼任している場合が多く、福祉用具に関する知識だけでなく介護技術や営業に必要なコミュニケーション能力、問題解決能力などさまざまなスキルが求められます。福祉用具専門相談員として働くことで幅広い知識を身に付けることができるため、自分の成長を感じることができ大きなやりがいに繋がるでしょう。
プライベートと両立しやすい
介護・福祉関連の仕事は休日が不定期で少ない、夜勤や残業が多いというイメージがありますが、福祉用具専門相談員は土日祝休みとしている職場も多く、比較的働きやすい環境が整っています。プライベートとの両立がしやすいため、モチベーションを維持しながら無理なく続けることができるでしょう。
福祉用具専門相談員の平均年収
求人ボックス給料ナビによると、2020年1月時点では福祉用具専門相談員の平均年収は正社員で312万円、アルバイト・パートで時給948円となっています。
ただし、現状では福祉用具専門相談員の仕事だけを担当している人は少なく、営業職や介護職、販売職などと兼務していることが多いようです。そのため職場や人によって年収には幅がありますが、求人などを見る限りでは年収の相場は介護職と同じくらいでしょう。
福祉用具専門相談員として年収アップを目指すならば、経験を積むことはもちろん、介護福祉系や医療系の資格を取得したり、営業で好成績を残したりすることが必要になってくるでしょう。
参考:求人ボックス給料ナビ
福祉用具専門相談員の将来性
高齢化が進む昨今では、介護の負担を減らすための用具や介護ロボットの積極的な活用が期待されているため、福祉用具専門相談員の需要も伸びていくと予想されます。
とはいえ、介護職などの募集に比べると求人数は多くはありません。また、現状では福祉用具専門相談員としてだけの仕事ではなく、営業職や介護職などを兼務している人が多いようです。
福祉用具専門相談員の資格だけでは就職先は限られてしまうため、
- 福祉住環境コーディネーター
- ケアマネジャー
- 介護福祉士
などの資格を持っておくことで、活躍の場を広げることができるでしょう。
福祉用具専門相談員は他の仕事との兼務が多い
福祉用具専門相談員は、福祉用具販売・レンタル店などで、高齢者や介護を行う家族に適切な選び方や使い方をアドバイスする仕事です。
指定の講習を修了、または指定の専門資格を保有することで福祉用具専門相談員として働くことができますが、実際は介護職や営業職、販売職など他の仕事と兼務している人が多いです。
そのため、福祉用具専門相談員になりたいならば、福祉住環境コーディネーターやケアマネジャー、介護福祉士などの資格を取得しておくことが望ましいでしょう。