皆さんは介護事務(ケアクラーク)という仕事をご存じでしょうか?
介護事務とは、介護施設において介護報酬請求事務をメインに行う職業です。ここでは、介護事務のなり方や仕事内容、やりがい、年収について紹介します。
介護事務とは?
介護事務とは、特別養護老人ホームやデイサービスセンターなどで介護報酬請求事務(レセプト業務)や受付業務、介護に必要な手続きなどを行う職業で、ケアクラークとも呼ばれます。医療機関には診療報酬請求業務やクラーク業務を行う医療事務がいますが、介護事務はその介護施設版というイメージです。
医療事務に必要な資格とは?医療事務の仕事内容・やりがい、年収についてを解説!
2000年に介護保険制度が始まったことにより、介護事務のスキルを持った人は欠かすことのできない存在となりました。現状ではまだまだ働く環境が整っていませんが、介護事務は人手不足の介護業界を支える重要な役割を担っています。
介護事務の資格を取るには?
資格がなくても介護事務として働くことはできますが、介護保険に関する専門的な知識が必要になるため民間資格を取得することが望ましいです。ここでは、介護事務に関連する資格をいくつか紹介していきます。
ケアクラーク
数ある介護事務系資格の中でも有名なのが、一般財団法人日本医療教育財団が行うケアクラーク技能認定試験です。介護保険制度が始まる前の1998年から実施されており、合格すると「ケアクラーク」の称号が与えられます。
<試験概要(2020年2月時点での情報)>
主催 | 一般財団法人日本医療教育財団 |
資格の趣旨 | 介護事務として必要な社会福祉制度や介護報酬請求事務などに関する知識と技能レベルを評価・認定。 |
受験資格 | なし |
試験日程 | 年6回(4月、6月、8月、10月、12月、2月) |
試験会場 | 在宅 |
受験料 | 6,700円(税込) |
試験内容 | 学科試験(介護事務知識)、実技試験(介護報酬請求事務) |
合格基準 | 学科および実技試験においてそれぞれ70%以上の正答率 |
合格率 | 非公開 |
備考 | 試験日翌日までに、試験問題・解答用紙を郵送する。 |
参考:一般財団法人日本医療教育財団 http://www.jme.or.jp/exam/cc/index.html
介護事務管理士
2000年にスタートした介護事務管理士技能認定試験は、ケアクラークと並んで介護業界で広く認知されている資格です。合格者には「介護事務管理士」の称号が与えられます。
<試験概要(2020年2月時点での情報)>
主催 | JSMA 株式会社技能認定振興協会 |
資格の趣旨 | 介護施設での受付や会計、介護報酬請求事務などのスキルを証明 |
受験資格 | なし |
試験日程 | 年6回(奇数月の第4土曜日) |
試験会場 | 全国30以上の専門学校等 |
受験料 | 6,500円(税込) |
試験内容 | 学科試験(法規、介護請求事務)、実技(レセプト業務、レセプト作成) |
合格基準 | 学科および実技試験においてそれぞれ70%以上の正答率、 かつ実技試験の全問題において50%以上の正答率 |
合格率 | 50%程度 |
備考 | 協会と提携している株式会社ソラストでは対策講座や問題集販売を実施している。 |
参考:JSMA 株式会社技能認定振興協会https://www.ginou.co.jp/qualifications/kaigo-jimu.html
介護報酬請求事務技能検定
介護報酬請求技能検定は、介護事務の中でメインとなる介護報酬請求業務(レセプト業務)に特化した試験です。試験は教材持ち込みOKで合格率も高いので、他の資格と組み合わせて取得するのもおすすめです。
<試験概要(2020年2月時点での情報)>
主催 | 日本医療事務協会(JMCA) |
資格の趣旨 | 介護報酬請求業務に必要な知識と技能レベルを証明。 |
受験資格 | なし |
試験日程 | 年6回(偶数月第3日曜日開催) |
試験会場 | 実施回によって異なる |
受験料 | 6,000円(税抜) |
試験内容 | 学科試験、実技試験 |
合格基準 | おおむね70%以上の正答率 |
合格率 | 75~85%程度 |
備考 | 教材や資料の持ち込み、閲覧可。 |
参考:日本医療事務協会http://www.japanmc.jp/kaigohoshu.html
その他
上記で紹介した資格以外にも、介護事務には以下の資格があります。詳細は各団体のサイトを確認してみましょう。
・介護事務実務士(特定非営利活動法人医療情報実務能力協会:https://www.medin.gr.jp/exam_sche/exam_nurs_info.html)
・介事管理専門秘書検定資格(一般財団法人日本能力開発推進協会:https://www.jadp-society.or.jp/course/care-secretary/)
・介護保険事務管理士(一般財団法人日本病院管理教育協会:http://www.jh-mgt.org/kaigohokenjimu.html)
介護事務の仕事内容
介護事務は事務と言ってもパソコンに向かいながら黙々と作業するだけではありません。専門的な知識が必要な業務から受付業務まで幅広く対応することが求められます。
介護報酬請求業務(レセプト業務)
介護事務のメインとなる仕事は介護報酬請求業務(レセプト業務)です。介護サービスを利用すると、利用者は実際にかかった費用のうち1~3割を負担し、残りを保険者(市町村)が払います。そのため、事業者は介護サービスにかかった費用を保険者に請求しなければなりません。このとき必要になるのが「介護給付費請求書」と「介護給付費明細書」で、パソコンで自動作成されたこれらの書類に間違いがないかをチェックするのが介護報酬請求業務(レセプト業務)です。
窓口業務など事務全般
主に介護報酬請求業務を行う介護事務ですが、受付や電話対応、手続きなどの窓口業務、労務管理、備品の発注など施設の運営に関わる業務を幅広く担当することも多いです。事業所によっては他職種のスタッフのサポートを行うことも少なくありません。
介護事務の就職先
介護事務の主な就職先は介護施設がメインですが、福祉用具事業所に就職する人もいます。
介護施設
介護事務の就職先は、特別養護老人ホームやグループホーム、デイサービスセンター、訪問介護ステーションなどの介護施設がメインです。介護報酬請求業務や受付業務などの事務全般を担当することが多く、他のスタッフのサポートを行うこともあります。現状では、ケアマネジャーや介護福祉士の資格を持っている人が介護事務を兼務することが多いようです。
福祉用具事業所
介護ベッドや車いすなどを販売またはレンタルする福祉用具事業所で働く介護事務もいます。事業所によって仕事内容は少しずつ異なりますが、ここでは主に介護報酬請求業務と電話対応を担当します。ケアマネジャーや利用者から「どんな状況で、どんな商品が必要か」を聞き、その内容を福祉用具専門相談員に伝え、レンタル・販売時には介護報酬請求に必要な書類のチェックを行います。
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介護事務のやりがい
無資格でもなれるとは言え、介護保険の専門的な知識が必要とされる介護事務。多くの業務をこなさなければならない時もありますが、介護施設において欠かせない存在でありやりがいも大きな仕事です。
専門知識を活かした仕事ができる
介護事務の主な仕事である介護報酬請求業務には、介護保険に関する専門的な知識が必要です。介護報酬請求業務は施設の経営に関わる重要な業務であるため、責任とやりがいを持って働くことができるでしょう。
また、電話対応や備品の発注、施設内の清掃など幅広い業務を担当するため、介護施設を支える一員として、また社会を支える一員として誇りを持って活躍することができます。
ワークライフバランスが安定している
介護業界は勤務時間が不規則であることからブラック業界というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、介護事務は基本的に日中の勤務であり比較的休みも取りやすいためワークライフバランスが安定しています。
請求業務を行う月初などは忙しくなることもありますが、基本的には残業も多くありません。勤務時間が安定しているため、無理なく続けられるという点も介護事務の魅力のひとつと言えます。
介護事務の平均年収
介護求人ナビによると、介護事務の正社員の平均月収は18万円、平均年収は297万円となっています(2019年6月時点)。介護業界自体があまり恵まれた待遇ではないうえ、介護事務は無資格でもなれる職種であるため、給与水準はあまり高くありません。
また、実際はケアマネジャーや介護スタッフが医療事務を兼務している場合が多く、介護事務という職種での正社員求人は少ないのが現実です。ケアマネジャーや介護福祉士として働き医療事務の仕事も行う場合は、年収はそれぞれの職種と同等であると考えておきましょう。
参考:介護求人ナビ
介護事務の将来性
高齢化による介護施設の増加により、介護業界は慢性的な人手不足を抱えています。また、2000年に介護保険制度が導入されたことにより介護報酬請求業務が生まれ、介護事務の存在が注目されるようになりました。
しかし、実際はケアマネジャーや介護福祉士が医療事務を兼務していることが多く、医療事務だけの求人はまだまだ少なく伸び悩んでいます。
例えば、介護求人ナビで東京都の正社員求人を検索してみると、
- 介護福祉士:658件
- ケアマネジャー:1,403件
- 介護事務:8件
となっていました。
(引用:介護求人ナビ:https://www.kaigo-kyuujin.com/)
介護事務はなくてはならない重要な存在ですが、現状から考えるとしばらくは介護事務だけで就職を目指すことは難しいと言えます。そのため、ケアマネジャーや介護福祉士、社会福祉士など他の介護職として就職したうえで、介護事務の仕事を担当するという方法も考えておきましょう。
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介護事務の求人は多くない
介護事務は、特別養護老人ホームやデイサービスセンターなどの介護施設で、主に介護報酬請求事務(レセプト作成)や受付業務を行う職業。無資格でもなれますが、介護保険に関する知識が必要になるため民間資格を保有している人が多いです。
ただし、現状ではケアマネジャーや介護福祉士などが介護事務を兼務していることが多く、介護事務だけの求人は多くありません。そのため、介護事務として働くためには、ケアマネジャーや介護福祉士、社会福祉士などの資格を取得しておくことが望ましいでしょう