みなさんは精神保健福祉士という職業をご存じでしょうか?
精神保健福祉士は社会福祉士、介護福祉士と並んで福祉系三大国家資格(三福祉士)と呼ばれる国家資格です。ここでは、精神保健福祉士に興味を持っている人や目指しているに向けて、仕事内容や資格の取り方、やりがい、年収について解説していきます。
精神保健福祉士とは?
精神保健福祉士とは、病院の精神科や精神障がい者福祉施設などで、精神に疾患や障害がある人に対して日常生活や社会復帰の支援などを行う「精神科ソーシャルワーカー(Psychiatric Social Worker)」です。
精神保健福祉士は、1997年の「精神保健福祉士法」施行によって誕生した比較的新しい国家資格です。2018年時点では全国に85,122人の登録者が存在し、医療、保健、福祉などさまざまな分野で活躍しています。
高ストレス社会と言われる現代において、精神に疾患や障害を持つ人を支える精神保健福祉士の役割はますます重要になってきています。
福祉系三大国家資格(三福祉士)と呼ばれる社会福祉士、介護福祉士については以下参考にしてください。
社会福祉士の資格とは?資格の取り方から仕事内容・年収、やりがい等を簡単に解説!
介護福祉士の資格とは?資格の取り方から仕事内容・年収、やりがい等を簡単に解説!
精神保健福祉士の資格を取るには
精神保健福祉士は国家資格の職業です。国家試験を受けるためにはいくつかの受験条件をクリアしなければなりません。
精神保健福祉士国家試験を受験するまでのルート
精神保健福祉士国家試験の受験資格をクリアするためには、複数のルートがあります。
- 4年制大学の福祉系学科で指定科目を履修する
- 福祉系短大で指定科目を履修+相談援助実務
- 一般大学卒業+一般養成施設(1年以上)
- 一般短大卒業+相談援助実務+一般養成施設(1年以上)
さらに詳しく分けると、以下のような進路があります。
福祉系の大学や短大で指定科目を履修することにより、最短4年で国家試験の受験資格が与えられます。
福祉系大学や短大で指定科目を履修していない、または福祉系以外の大学や短大を卒業した場合は、指定の養成施設で修学することで受験資格が与えられます。2019年4月時点では、短期養成施設は全国に28施設、一般養成施設は32施設あります。養成施設の中には夜間や通信制コースもあるので、働きながら受験を目指すことも可能です。
国家試験合格後、精神保健福祉士の登録簿に氏名や生年月日、合格年月を登録することによって、精神保健福祉士として働けるようになります。登録には登録免許税15,000円と登録手数料4,050円がかかりますが、期限は特にありません。詳細は公益財団法人社会福祉振興・試験センターのホームページを確認しましょう!
精神保健福祉士国家試験の概要と合格率
<精神保健福祉士国家試験>(2020年1月時点の情報)
試験日程 | 毎年2月 |
試験会場 | 北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県 |
受験料 | 一般受験者:17,610円 社会福祉士との同時受験者:14,160円 科目免除者:14,080円 |
試験科目 | 精神疾患とその治療、精神保健の課題と支援、精神保健福祉相談援助の基盤、精神保健福祉の理論と相談援助の展開、精神保健福祉に関する制度とサービス、精神障害者の生活支援システムなど16科目※ |
合格基準 | 60%以上の正答率かつ各科目すべてにおいて得点があること |
合格率 | 60%前後 |
※社会福祉士の資格を持つ場合は一部免除
合格率は60%前後と、社会福祉士の合格率(25~30%)よりは高く推移しています。数字を見ると半分以上が合格していることになりますが、見方を変えると大学や養成機関で勉強してきた人でも40%は不合格になるということです。
そのため、油断せずにしっかりと勉強することが必要です。なお、社会福祉士の資格を持っている場合は試験科目が半分以下になるので、難易度はぐっと下がるでしょう。
公益財団法人社会福祉振興・試験センターのホームページには過去の試験問題が公開されているので、気になる人はチェックしてみましょう!
公益財団法人社会福祉振興・試験センター:
社会福祉士との違いは?
社会福祉士と精神保健福祉士は、どちらも日常生活が困難な人や問題を抱えている人に対して社会復帰の支援を行う国家資格の職業です。両者の主な違いは支援の対象者と働く場所です。
社会福祉士 | 精神保健福祉士 | |
対象者 | 高齢者、子ども、障がい者、低所得者など | 精神に何らかの病気や障害を持つ人 |
働く場所 | 介護施設、児童相談所、医療施設、行政施設など | 病院の精神科、精神障がい者福祉施設、保健所など |
社会福祉士と精神保健福祉士は共通する部分も多いため、どちらかの国家資格を持っている場合、もう一方の国家試験では科目の一部が免除されます。
精神保健福祉士の仕事内容
精神保健福祉士の主な仕事は相談業務です。対象者やその家族からの相談を受け、適切な助言や指導をするなど日常生活を送るまでの支援を行います。具体的な仕事内容は働く場所によって異なります。
医療機関
総合病院の精神科や精神科専門病などで、医師や看護師、臨床心理士などと連携しながら、入院・通院中の精神疾患を持つ患者さんに対しさまざまな相談に応じます。また、退院後の住居や仕事の紹介や公的支援制度の説明なども行います。
福祉行政機関
市区役所、保健所、精神保健福祉センターなどでは、相談業務のほか、法律に基づく各種支援事業の手続きや精神障がい者支援を目的とした就労支援事業、地域住民への普及啓発活動などを担当します。
生活支援サービス
障害者総合支援法上の障害福祉サービス等事業所では、目的に応じてさまざまな仕事を行います。例えば、家事などの基本動作を一緒に行う日常生活訓練、就労前訓練のための作業を通しての社会参加、相談対応による地域生活の支援などを行います。
司法施設
「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った精神障害者の医療及び観察に関する法律」に基づき、保護観察所や矯正施設などで働くケース。ここでは、精神の疾患や障がいが原因で善悪の判断ができず重大な罪を犯してしまった人の社会復帰を目的とし、「精神保健参与員」や「社会復帰調整官」として働きます。
その他
近年では、教育機関や企業、ハローワークなどで働く精神保健福祉士も増えています。教育機関ではスクールソーシャルワーカーとしていじめや不登校への対応、企業では所属する人のストレスやうつ病対策などを担当します。
精神保健福祉士の就職先
精神保健福祉士の働く場所は幅広く、やりたい仕事内容に合わせて多様な選択肢から選ぶことができます。2019年2月時点では、精神保健福祉士の就職先は以下のようになっています。
最も多いのが病院・診療所で42.5%、次いで福祉サービス事務所、行政機関、高齢者対象施設、福祉関連施設となっています。
その他の項目には、社会福祉協議会、各種学校、障がい者職業センターなどが含まれます。
精神保健福祉士のやりがい
精神保健福祉士は精神に問題を抱える人を相手にする仕事。複雑な人のメンタルをコントロールすることは決して簡単なことではありません。しかし、たくさんの苦労がある分喜び・やりがいを感じることも多いでしょう。
困難を乗り越え患者さんと前進していく喜び
精神疾患の患者さんは感情を表したり言葉にして伝えたりすることが苦手な場合も少なくありません。精神保健福祉士は、専門知識を活かして表情の変化や何気ない行動から本質を見抜いて解決していく能力が求められます。
難しい問題に直面したり、長い時間を要したりすることもありますが、その分患者さんの回復や笑顔が大きな喜び・やりがいとなるでしょう。
社会的貢献度の高さ
高ストレス社会と言われる現代では、精神に疾患や障がいを抱えている人が大幅に増加しています。しかしその反面、いまだに社会からの偏見が残っている部分があります。精神保健福祉士は、そうした社会的問題を解決していく一端を担う仕事です。
目の前の患者さんを専門知識を活かしてサポートすることは、社会貢献度の高くやりがいがある仕事であると言えるでしょう。
精神保健福祉士の平均年収
精神保健福祉士の平均年収は400万円程度と、国家資格の中では低めの水準となっています。
一口に精神保健福祉士と言ってもさまざまな働き方があり、職場によって年収も異なります。総合病院の精神科や行政機関などは比較的収入が高くなると言われています。
精神保健福祉士は基本的に経験やスキルに応じて昇給していきます。キャリアを積んで役職が付けば、平均年収を大きく上回ることも可能でしょう。
精神保健福祉士の将来性
厚生労働省によると、精神疾患で医療機関にかかっている人は2002年では258.8万人だったのに対し、2017年では419.3万人と大幅に増加しました。精神に問題を抱える人が増加したことから、近年ではメンタルヘルスが重視されるようになりました。
そのため、働く人のストレス対策として教育機関や企業、就労支援事業などさまざまな場所で精神保健福祉士の活躍が期待されています。今後は、さらなるメンタルサポートや精神障がい福祉への注目によって精神保健福祉士の需要はますます高くなるでしょう。
参考:厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/data.html
精神保健福祉士はメンタルサポートで人を支える国家資格!
精神科ソーシャルワーカーとして精神に病気や障害を持つ人の社会復帰をサポートする精神保健福祉士。
主な就職先は医療機関や福祉施設ですが、メンタルヘルスが重視される近年では、教育機関や企業などさまざまな場所で活躍が期待されています。
精神保健福祉士の国家資格には社会福祉士と共通する科目があるので、精神保健福祉士を目指すならば社会福祉士の資格についてもチェックしておきましょう。
人の心と向き合うことが得意な人、根気強く人のサポートをしたい人はぜひ精神保健福祉士を目指してみてはいかがでしょうか?
精神保健福祉士、福祉・介護の転職・求人情報をチェック!
精神保健福祉士、福祉・介護の転職 ・求人情報を探している方のために、人気の求人サイトをピックアップしました。
直近の転職を考えている方だけでなく、どういう求人情報があるか知りたいという方は一度求人情報を把握しておくことは今後のキャリアを考えるきっかけになりますよ。
介護JJ(ジャストジョブ)
株式会社カスタマ社の運営する、介護JJ(ジャストジョブ)。
「現在資格を持っている」方が主なターゲットとなるサイトですが、介護JJ経由での転職で「転職支援金が最大20万円もらえる」ことが最大の魅了です。
元々介護の仕事をしていたが現在お休みしているという方、ぜひ一度求人情報をチェックしてみてください。
かいご畑
株式会社ニッソーネット社の運営する、かいご畑。
こちらは未経験の方が特に使いやすいサイトとなっており、かいご畑経由の求人で転職を決めた方は、介護の資格講座の受講料が0円になる『キャリアアップ応援制度』の利用が出来ます。未経験の方にはとてもありがたい制度ですね。
未経験だけど介護の仕事を始めたい方、北海道から関東・関西・九州まで、幅広く求人を扱っていますので興味ある方はぜひチェックしてみてください。