臨床検査技師という職業を知っていますか?
聞いたことはあるが、実際の仕事内容など詳しいことは知らない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、臨床検査技師の仕事内容や資格の取り方、やりがい、年収についてなど、詳しく解説していきます。
臨床検査技師とは?
臨床検査技師とは、病院などの医療機関で、診療に必要な様々な検査を行う職業です。
医師の指示のもと必要な検査を行い、その結果を医師に報告しています。患者さんの病気を特定するには必要不可欠な職業です。詳細は後ほどまとめていますが、大きく分けて2種類の検体検査・生体検査と呼ばれる検査を行います。
臨床検査技師は厚生労働省で定められた国家資格で、以下のように定義されています。
「厚生労働大臣の免許を受けて、臨床検査技師の名称を用いて、医師又は歯科医師の指示の下に、微生物学的検査、血清学的検査、血液学的検査、病理学的検査、寄生虫学的検査、生化学的検査及び厚生労働省令で定める生理学的検査を行うことも業とする者をいう。」
検査の種類はとても多く、心電図検査や超音波検査、血液学的検査など他にも様々な検査を行います。
資格を取得しなければ臨床検査技師になることはできません。
病院だけでなく、医療系企業や動物病院からの求人もあるので、活躍の場が多い職業です。
臨床検査技師の資格を取るには
臨床検査技師の資格を取るには、国家試験を受ける必要があります。
しかし、まずはその国家試験の受験資格を得なければなりません。
- 高校卒業→臨床検査技師養成課程のある4年制大学→卒業
- 高校卒業→臨床検査技師養成課程のある3年制の短大または専門学校→卒業
この2つのルートで、国家試験受験資格を得ることができます。
転職で臨床検査技師になる場合でも、同じルートをたどらなければなりません。
専門学校だと最短3年で資格を取ることができるので、少しでも早く臨床検査技師になりたい方はおすすめです。
第66回臨床検査技師国家試験(令和2年)の試験概要は以下のとおりです。
実施日 | 令和2年2月19日(水) |
受験料 | 11,300円 |
試験地 | 北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、香川県、福岡県及び沖縄県 |
試験方式 | マークシート方式 |
問題数 | 200問 |
科目 | 医用工学概論(情報科学概論及び検査機器総論を含む。)、公衆衛生学(関係法規を含む。)、臨床検査医学総論(臨床医学総論及び医学概論を含む。)、臨床検査総論(検査管理総論及び医動物学を含む。)、病理組織細胞学、臨床生理学、臨床化学(放射性同位元素検査技術学を含む。)、臨床血液学、臨床微生物学及び臨床免疫学 |
合格基準 | 配点を1問1点、合計199点満点とし、120点以上の者を合格とする。 |
以下、ここ数年の臨床検査技師国家試験の合格率です。
第60回(2014年) | 81.2% |
第61回(2015年) | 82.1% |
第62回(2016年) | 76.4% |
第63回(2017年) | 78.7% |
第64回(2018年) | 79.3% |
第65回(2019年) | 75.2% |
合格率は、70~80%で横ばいのようですね。
ちなみに、他の医療系の国家試験の合格率は以下の通りです。
- 医師:約90%
- 薬剤師:約70%
- 看護師:約90%
- 理学療法士:81%
合格率だけで見ると、臨床検査技師は難易度が高めのように見えます。
合格率だけで難易度を判断するのは難しいのですが、参考にしてみてください。
また臨床検査技士の資格を持っていると臨床工学技士の資格取得にも役立ちます。
臨床工学技士については以下参考にしてください。
臨床工学技士の資格とは?資格の取り方から仕事内容・年収、やりがい等を簡単に解説!
臨床検査技士の仕事内容
臨床検査技師の仕事内容は、医師の指示のもと、患者さんの検査を行うことです。
その臨床検査は、大きく2種類の検査方法に分けられます。
生体検査(生理学的検査)と検体検査です。
生体検査(生理学的検査)とは?
生体検査は、患者さんの生理機能を調べる検査です。
直接患者さんの身体に触れて検査をするので、患者さんの気持ちを理解して対応することが求められます。
生体検査には次のようなものがあります。
- 心電図検査
- 超音波検査(エコー)
- 呼吸機能検査
- 熱画像検査(サーモグラフィ)
- 脳波検査
- 眼底写真検査
- 肺機能検査
- 筋電図検査
この他にも様々な検査があります。
検体検査とは?
検体検査は、血液や尿など患者さんから得た検体を使う検査のことです。
検体を検査することで、患者さんの内臓にどのような異常があるのかを判断したり、病名の特定や、病気の進行具合を診断したりします。
また、検査のための採血業務も行うことがあります。
検体検査には次のようなものがあります。
- 血液学的検査
- 微生物学的検査
- 尿や便などの一般検査
- 輸血臓器移植関連検査
- 遺伝子検査
- 病理学的検査
- 生化学的検査
臨床検査技師の就職先
臨床検査技師は総合病院だけでなく、整形外科などの専門病院、保健所、製薬メーカーなど幅広い就職先があります。
一つの資格でも就職先の選択肢が多いのは嬉しいですね。
幅広い就職先の中で、一番多い就職先が大学附属病院や総合病院、病院です。
次に多いのが、検査センターで、主に検体検査を担うことになります。
一般的に多いところは病院や検査センターですが、自分の適性ややりたいことに合う就職先を選びましょう。
- 大学附属病院や総合病院:大きい検査施設で、医師の指示のもと臨床検査を行います。
- 病院:通院または入院の患者さんを、医師の指示のもとで、臨床検査を行います。
- クリニック:小規模の診療所で、医師の指示のもとで、臨床検査を行います。
- 健診センター:健康診断を行う専門施設で、健診項目の臨床検査を行います。
- 臨床検査センター:検査設備を持たない病院から検体を預かって検査を行います。
- 血液センター:血液検査や品質管理を行います。
- 医療機器メーカー:営業支援(アプリケーションスペシャリスト)の業務を行います。
- 医薬品開発業務委託機関(CRO):製薬メーカーが医薬品開発のために行う治験に必要な業務を代行する企業で、医療機関の治験業務を監視、確認します。(臨床開発モニター)
- 治験施設支援機関(SMO):治験業務をサポートする企業で、全体を調整する。(治験コーディネーター)
- 製薬メーカー:治験データの回収や確認を行います。(臨床開発モニター)
- 動物病院:動物の臨床検査を行います。
臨床検査技師のやりがい
臨床検査技師は、人の健康や命にかかわる重要な職業。
そのため、やりがいを感じることも多いですよ。
患者さんの命や健康を守ることができる
患者さんの命や健康を守ることができたときにやりがいを感じることができます。
臨床検査技師がいなければ、患者さんの病気を見つけられないので、患者さんにとって、とても大切な存在です。
臨床検査技師が行った検査によって、患者さんの病気を発見できます。
特にその発見した病気が重大な病気で、早期発見できたときは、患者さんの命を救えたといっても過言ではありません。
重大な病気は早期発見することがとにかく大切なので、早期発見できたときの達成感はかなり大きいです。
人の命や健康にかかわる仕事は責任重大ですが、人を救うことができたときのやりがいはとても大きいですね。
医師の診療に貢献できる
医師の診療に貢献できたときにも、やりがいを感じることができます。
医師の指示のもと臨床検査を行うので、仕事の中での医師との連携はとても重要です。
検査を行い、知識や経験をもとに分析し、報告する仕事の中で、医師から意見を求められることもあります。
そこで的確な意見を言えたとき、医師のサポートや医師の診療への貢献ができたと感じ、やりがいを感じます。
専門性高めて、知識や経験を増やせば増やすほど、医師のサポートができて、やりがいを感じることが多くなりますね。
臨床検査技師の平均年収
臨床検査技師の平均年収は、平成30年賃金構造基本統計調査によると、約470万円です。
ですが、臨床検査技師の平均年収は、就職先の規模や経験年数、地域によって異なるので、この数字はあくまで平均年収です。
規模の大きい就職先だと給与水準は高い傾向がありますし、経験年数が長いと年収も増えます。
自分がどんな仕事内容で働きたいかももちろん大切ですが、収入面も考慮して就職先を決めると良いでしょう。
また、年収アップを目指して臨床検査技師として別の職場に転職したいという方は、今回のデータを参考にしてみてください。
臨床検査技師の将来性
臨床検査技師の活躍の場は、将来増えていく傾向があります。
臨床検査技師の現状
まず、現状について説明します。
臨床検査技師は現在供給過多の就職が難しい状況で、余る傾向にあります。
その理由は、検査の自動化です。
今まで人が行ってきた検査が自動化されてきているため、以前より病院での臨床検査技師の就職は難しくなってきています。
そのため、現在は臨床検査技師の資格を持つだけでなく、より高度な資格を持つことで対策している人も多いようです。
臨床検査技師は将来性のある職業
臨床検査技師は、現状は供給過多ですが、今後は臨床検査技師の活躍の場は増えていくため、将来性は十分あります。
いままでは臨床検査技師の就職先は、ほとんどが総合病院や病院など医療機関でした。
しかし、医療系企業や動物病院の求人も増えてきていて、今後も増加することが予想されます。
最近はペットを飼う人も多く、大きい動物病院では、動物の医療用検査に力を入れているところも増加。
今後はさらに動物病院でも臨床検査が広がっていることが予想されるため、さらに動物病院でも臨床検査技師が活躍できるようになります。
医療機関で働く場合は、検査項目の増加や予防医学の発展に対応していく必要があります。
毎年検査項目がどんどん増加しているため、その増加に伴って、専門的知識も増やしていき、検査結果を分析する能力がさらに必要です。
また、健康ブームの現在は、予防医学が注目を浴びています。
病気ではなくても、健康な人の病気予防のための、検査・検診が増えていくので、それに対応する資格を持つのも良いでしょう。
臨床検査技師は、将来性はありますが、さらに専門性を高めたり、知識を増やしたりすることで、需要が高まりそうですね。
人の命を救う臨床検査技師は重要な仕事!
臨床検査技師は、医師の指示のもと、患者さんの検査を行う仕事です。
臨床検査技師の検査や知識が患者さんの命を救うこともあるため、とても責任重大で、重要な仕事。
ですが、その分やりがいは大きく、人の役に立てていることが実感できるときも多いです。
将来性も十分にあり、病院以外でも就職先は幅広く存在します。
人の健康にかかわって人の役に立ちたい、専門性を活かす仕事がしたい、やりがいの大きい仕事がしたいという思いのある方は、臨床検査技師を目指してみましょう。