たくさんの子供と触れあえる職業として女性を中心に人気を誇る保育士。
しかし、興味はあっても資格の取り方や具体的な仕事内容を知らないという方も多いのではないでしょうか?そこでこの記事では、保育士のなり方や就職先、やりがい、年収などについてをまとめて解説します。
保育士とは?
保育士とは、主に保育園において子どもの教育や保護者に対する保育指導をする国家資格の職業です。児童福祉法では「保育士とは、第18条の18第1項の登録を受け、保育士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、児童の保育及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うことを業とする者をいう。」と定められています。保育園によっては保育士資格がなくでも働けますが、有資格者よりも仕事内容が限られるうえ給与にも差が出る場合が多いです。
保育士というと女性をイメージする人が多いかもしれませんが、男性でも保育士資格は取れます。現状では男性保育士の割合は数%にとどまっていますが、保育士不足が叫ばれている中で男性保育士の需要はどんどん高まっています。
保育士の役割は、ただ子どもたちを預かって遊ぶだけではありません。乳幼児期という人間形成にとって大事な時期に多くの時間を過ごすため、保護者のように子どもから信頼される存在にならなければなりません。その信頼関係の中で、食事や排泄、着替え、お昼寝などの生活習慣や社会性を身に付けさせていきます。そして、年齢や発達段階に応じた保育を行うため、保育計画や活動の記録、行事の企画・運営、設備点検などの業務も担います。
また、保育のプロフェッショナルとして、発達や育児の悩み対応や情報共有など、保護者支援も行います。子どものお世話をするイメージの大きい保育士ですが、専門知識を駆使した綿密な準備や保護者との関わりも非常に重要なのです。
引用元:厚生労働省 児童福祉法・https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82060000&dataType=0&pageNo=1
幼稚園教諭との違い
保育士と同じく子どもと関わる職業に「幼稚園教諭」がありますが、こちらは保育士とは違う資格が必要です。そして、保育士と幼稚園教諭の資格には次のような違いがあります。
保育士 | 幼稚園教諭 | |
管轄 | 厚生労働省 | 文部科学省 |
対象年齢 | 0歳~小学校就学前 | 3歳~小学校就学前 |
働く場所 | 保育園、児童養護施設、認定こども園など | 幼稚園、認定こども園 |
目的 | 乳幼児の保育 | 幼児と教育 |
保育園は乳幼児の生活の場であるのに対し、幼稚園は教育的な側面が大きいのが特徴です。なお、保育士と幼稚園教諭両方の養成課程がある大学や短大、専門学校を即業すれば、同時に資格を取得することも可能です。
保育士の資格を取るには
資格が無くても保育園で働くことができますが、働く場所や業務内容が限られるため、ほぼ必須資格と考えて良いでしょう。保育士の資格を取るためには、指定の養成校を卒業するか、自分で勉強して試験に合格する必要があります。ここでは、保育士になるまでのルートと試験概要を解説します。
保育士になるまでのルート
保育士資格を得るためには、以下の2つのルートがあります。
- 指定の養成校(大学、短大、専門学校)を卒業する
- 保育士試験に合格する
養成校には4年制の大学や2年制の短大、専門学校があり、卒業と同時に保育士資格を取得できます。2年制の場合、4年制よりも早く資格を取得できますが、その分学校生活がハードスケジュールになる傾向があります。また、大卒の場合は短大や専門学校よりも給料が若干高めになることが多いです。さらに、大学では保育士以外に幼稚園教諭や小学校教諭、特別支援学校教諭などの免許を取得できるケースもあります。
保育士試験の概要と合格率
保育士試験を受験する場合、指定の養成校に通う必要はなく、独学でもかまいません。受験資格や試験内容以下の通りです。
運営 | 一般社団法人 全国保育士養成協議会 |
受験資格 | ・大学、短大、専門学校卒業、または在学・中退(条件あり) ・高校、中学卒業+勤務経験 など ・年齢制限なし |
試験日程 | 前期:筆記試験4月、実技試験6月 後期:筆記試験10月、実技試験10月 |
受験料 | 12,950円(受験手数料12,700円+受験申請の手引き郵送料250円) |
筆記試験内容 | 保育原理、教育原理、社会的養護、児童家庭福祉、社会福祉、保育の心理学、子どもの保健、子どもの食と栄養、保育実習理論 |
実技試験内容 | 音楽表現に関する技術、造形表現に関する技術、言語表現に関する技術 |
合格率 | 20%前後 |
参考元:一般社団法人 全国保育士養成協議会・http://www.hoyokyo.or.jp/
保育士試験は年に2回行われ、筆記試験と実技試験の両方に合格する必要があります。受験資格に保育系の勉学経験は含まれませんが、合格率は約20%と高くありません。独学でもできる分、しっかりと勉強するという意欲が必要になるでしょう。より確実に合格を狙うなら、通信教育の保育士コースを受講するのもおすすめです。
なお、一般社団法人 全国保育士養成協議会ホームぺージには筆記試験の過去問が掲載されているので、興味がある人はぜひ確認してみましょう。
保育士の仕事内容
保育士の仕事は、主に0~6歳の子どもを預かり、保護者の代わりにお世話をすることです。幼稚園よりも開園時間が長いため、早番・遅番などシフト制で働くことが多いです。具体的な仕事内容は担当する子どもの年齢によっても異なりますが、以下のようなイメージです。
- 登園した子どもの受け入れ(保護者からの伝達、検温、荷物管理など)
- 個々の遊びの手助け(絵本、外遊びなど)
- 集団での活動のサポート(歌遊び、プール、工作など)
- 行事の企画・運営(運動会、誕生日会、遠足など)
- 昼食(手洗いの補助、配膳、片付けなど)
- おやつ(おやつや飲み物の準備、片付け)
- お昼寝(布団の準備、寝かしつけ)
- 事務作業(連絡帳の記入、保育計画や活動の記録)
- 排泄、着替え、片付けの補助
- 降園(保護者に登園の様子を伝える)
- 園内の清掃
- 掲示物の作成
子どもが登園してから降園するまで、安全に過ごせるように基本的な生活習慣をサポートします。また、心身の発達を促すためさまざまな遊びやイベントを行います。
そして、適切な保育をするためには、保育計画の作成や連絡帳の記入といった事務作業、行事の企画・運営、設備点検、備品の発注なども欠かせません。子どもたちと直接関わりながら行う仕事だけでなく、幅広い業務を行います。
さらに、近年では核家族化が進み、身近に子育ての相談ができる人がいないという保護者も増えてきました。そんな保護者にとって保育士は心強い存在。保育の専門家として相談に乗ったりアドバイスを送ったりすることも求められます。保護者との信頼関係を築くために、日頃から子どものちょっとした変化に気を配り、保護者との連絡・報告をこまめにしておかなければなりません。
保育士の就職先
保育士=保育園というイメージが大きいですが、保育園にもいくつか種類があり、保育園以外にも就職先はあります。ここでは、代表的な保育士の就職先を紹介します。
- 認可保育園
施設の広さや保育士の数、設備など国が定めた基準をクリアし、自治体や社会福祉法人、NPO法人などに認可された保育園。公立と私立があり、公立に勤務する保育士は公務員となる。私立は運営団体によって方針が異なるため、特色ある活動を含む。
- 認可外保育園
国が定めた基準を満たしていない保育園。保護者の状況に関係なく入園できる保育園が多いが、認可保育園よりも保育料が高い。国や自治体の制約を受けていない分、夜間や24時間預かりなど独自の保育を展開しやすい。
- 認証保育園
東京都独自の制度。国の基準からは外れる認可外保育園の中で、都が認めた保育園。都市型保育に対応すべく、13時間以上の開園や0歳児保育の実施などが条件になっている。
- 認定こども園
各自治体が認定した施設で、保育と幼児教育を一体的に行う。
- 病児保育室
入院している子どものお世話を、病院内で行う。
- 院内・企業内保育所
病院や企業内で働く従業員の子どもを預かる施設。
- 児童養護施設
さまざまな理由により、生まれた家庭での生活が困難な子どもが暮らす施設。保育士は24時間体制で生活指導や学習指導、身の回りのお世話を行う。6歳未満の児童だけでなく幅広い年齢を対象とする。
- 児童館
遊びを通して心身の健康や創造性を育むための施設。公的施設が多いが、民間企業やNPO法人運営の施設も増えてきた。保育園のように登園する子どもが決まっておらず、クラス運営などはない。
また、上記の他にもベビーシッターやプリスクール、ベビーホテルなどに就職する人もいます。
保育士のやりがい
給与や労働時間など待遇面ではあまり恵まれていないイメージがある保育士ですが、それでも「保育士になりたい」「この仕事を続けたい」と思えるのは、大きなやりがいがあるからです。では、具体的に保育士にはどんなやりがいがあるのでしょうか?
子どもの笑顔に癒される
保育士最大の醍醐味といえば、なんと言っても毎日子どもたちの笑顔を見られることです。純粋無垢な子どもの笑顔は、理屈では説明できないパワーがありますよね。「先生大好きー!」と抱きついてきたり「先生おはよう!」と元気に挨拶をしてくれたりすると、日頃の忙しさや疲れも吹き飛ぶことでしょう。
子ども成長を見守れる
保育士が対象とするのは主に0~6歳の乳幼児。この時期は自分でできないことも多いですが、学習スピードは驚くほど速いです。緊張してあまりコミュニケーションがとれなかった子どもが、周囲の友達と楽しそうに遊んだり大きな声で先生の名前を読んだりしたとき、自分で片付けができるようになったときなど、成長を感じるポイントはたくさんあります。毎日長い時間を一緒に過ごしているからこそ分かる変化もあるでしょう。そんな子どもたちの成長を見たとき、「保育士をやっていて良かった」と感じる人は多いようです。
イベントや卒園式で達成感を感じる
保育士は日常のお世話だけでなく、運動会や遠足、発表会などさまざまなイベントの企画や運営も行います。発達途中の子どもたちを相手にすることもあり、苦労することも多いですが、その分無事にやり終えたときには大きな達成感を感じられるでしょう。また、卒園式は子どもたちの成長を最も感じられる機会であり、1年の締めくくりであるため、特に気合いが入る人も多いようです。
保護者から感謝される
子育てに悩まない保護者はいません。「仕事との両立が大変」「うちの子は〇〇ができない」「育児に自信がない」など、皆何かしら悩みや不安を持っています。保育士は専門知識や経験を活かし、このような保護者の悩みに寄り添う仕事でもあります。そのため、「いつもありがとうございます」「とても助かりました」「こんなに成長しました」など感謝の言葉をかけられることも多いです。保護者からの感謝も、保育士という仕事の大きなやりがいになるでしょう。
保育士の年収
厚生労働省の平成29年賃金構造基本統計調査によると、保育士の平均年収は35.8歳で約342万円となっています。勤務するエリアや経験年数によって給料に差が出る場合が多く、都市部は地方よりも給与水準が高い傾向があります。また、勤務先の運営形態や学歴によっても変ってくるでしょう。そのため、平均年収はあくまで目安と考えておきましょう。
待機児童や保育士不足といった問題が叫ばれている一方で、保育士の処遇改善も課題になっています。現時点では医療系職種や福祉系職種と比べて決して給料が高いとは言えませんが、今後は徐々に改善していくかもしれません。
引用元:平成29年賃金構造基本統計調査・https://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/roudou-nenpou2017/03.html
保育士の将来性
保育士というと、少子高齢化の影響から需要が減少するのではないかと心配する人もいるかもしれません。
しかし、
- 待機児童問題
- 保育士不足
- 共働き世帯の増加
- 核家族化
といった理由から、保育士は今後も強く求められる仕事であると言えます。
現に、厚生労働省の「第3回 保育士等確保対策検討会」資料によると、平成27年10月時点の保育士有効求人倍率は全国平均が1.93倍となっています。
また、近年では認可保育園の他に、さまざまなニーズに応えるための保育施設も増加しています。中には独自のサービスを取り入れて、より専門性の高いサービスを提供している保育園も多くあります。そのため、保育士の勤務先の種類も多様化してきています。
以上の理由から、保育士は今後ますます需要が伸び、さまざまな形で活躍できる職業であると言えるでしょう。
参考元:「第3回 保育士等確保対策検討会」資料・https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/s.1_3.pdf
保育士資格があれば仕事の選択肢は豊富!
保育士資格は、指定の養成校を卒業するか、保育士試験を受けて合格することで取得できます。専門性の高い職業ですが、独学からでも始められるためハードルはそこまで高くありません。
近年では少子高齢化が進む一方で、保育士不足や待機児童問題などが注目されているため、保育士の需要は今後も高まると予想されます。また、保育ニーズの多様化に伴い、保育施設の種類も増加しています。そのため、保育士資格があれば働き口に困ることはあまりないでしょう。
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