保育士の給料は本当に安い? 平均月収、給料の上げ方まとめ

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出典:https://benesse.jp/juken/201502/20150219-3.html

社会的な問題にもなっている保育士の給料。その影響もあり保育士の給料は低いというイメージが強いですが、本当に低いのでしょうか? 保育士の平均月収・年収について、給料を上げるためにできることをまとめてみました。保育士として働きたいと思っている人や、これから転職を考えている保育士の方は必見です!

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保育士の給与水準は低いの?

子育てや保育園が増えない問題が挙がるたびに取り上げられる保育士の給料問題。ニュースで目にするとおり給与水準は低い傾向があります。年々少しずつ保育士の給料が引き上げられているというデータはありますが、それでも低いことに変わりはありません。実際のところ、保育士の給料はどのくらいなのでしょうか? 様々な観点から、保育士の給料の実状や、なぜ保育士の給料が安いのかを検証してみましょう。

保育士とほかの国家資格の職種との年収比較

大前提として、保育士は国家資格です。国家資格とは、国や国から委託を受けた機関が試験・認定を行う資格のこと。保育士の給料はほかの国家資格の職種と比較するとどのあたりに位置しているのでしょうか。保育士を含む国家資格が必要な20の職業の年収を、ランキング形式で比較してみました。

順位職業年収
1弁護士11,893,200
2医師10,718,900
3公認会計士・

税理士

8,171,200
4一級建築士6,771,700
5歯科医師6,208,900
6不動産鑑定士5,663,900
7獣医師5,535,400
8薬剤師5,326,600
9診療放射線・

診療エックス線技師

5,303,200
10社会保険労務士5,299,900
11看護師4,723,500
12臨床検査技師4,530,000
13測量技術者4,334,500
14歯科技工士4,014,200
15准看護師3,987,200
16理学療法士・

作業療法士

3,965,000
17介護支援専門員

(ケアマネージャー)

3,665,600
18栄養士3,399,000
19保育士(保母・保父)3,098,000
20福祉施設介護員3,071,600

(出典:平成25年度 政府統計の総合窓口 賃金構造基本統計調査)

このように、保育士は福祉施設介護員(介護士)に次いでワースト2位という結果になりました。保育士の年収309万円は、1位の弁護士の年収のおよそ1/4ほど。国家資格全体の平均年収はおよそ550万円というところからも、保育士の給料が非常に安いことが分かります。

都道府県別の保育士の年収比較

保育士の給料は、都道府県によって大きく異なります。次は、都道府県別の保育士の平均年収をランキングにしてみました。あなたの住んでいる都道府県の保育士の年収は何位でしょうか?

1京都府401.1万円
2東京都394.3万円
3愛知県372.8万円
4岡山県363.7万円
5滋賀県359万円
6神奈川県358.5万円
7山口県355.6万円
8大阪府353.7万円
9福岡県352.4万円
10兵庫県346.6万円
11宮崎県344.8万円
12群馬県341.3万円
13福井県339.7万円
13静岡県339.7万円
15熊本県338.3万円
15岩手県338.3万円
17長野県337.7万円
18山梨県337.3万円
19高知県332.3万円
20栃木県330.9万円
21新潟県329.9万円
22埼玉県328万円
23富山県327.9万円
24香川県327.6万円
25千葉県327.4万円
26徳島県322.3万円
26和歌山県322.3万円
28長崎県321.2万円
29石川県320.5万円
30秋田県320.4万円
31広島県320万円
32奈良県317.4万円
33山形県316.8万円
34岐阜県315.2万円
35北海道311.3万円
36宮城県307.4万円
37佐賀県307.2万円
38三重県303.6万円
39福島県298.4万円
40茨城県297.6万円
41鳥取県295.9万円
42大分県295.4万円
43青森県294.9万円
44鹿児島県290.1万円
45沖縄県288.7万円
46愛媛県284.1万円
47島根県279.7万円

(平成29年度 賃金構造基本統計調査より 現金給与と年間賞与額を合計して算出)

1位の東京都と、最下位島根県の年収差は121.4万円です。地域が異なるだけでなぜこんなに大きな差が出るのでしょうか? それは、地域の物価の差や保育料の差はもちろん地域ごとの保育政策の違いが大きく影響しています。人口が多く企業が密集している地域では、保育園に子どもを預けたい保護者が多くなる傾向があります。そうすると、待機児童問題や保育士不足となるため、保育士の給料を上げて保育士の確保をしようという動きが生まれるのです。逆に、人口も企業も多くない地域では保育士不足が深刻化しにくいため、保育士の給料も上がりにくいと言えるでしょう。

 私立保育園・公立保育園の月収&年収差

まずは、このデータを見てください。

月収年収
私立保育園26.2万円314.6万円
公立保育園28.0万円335.8万円

(平成29年度 幼稚園・保育園・認定こども園等の経営実態調査集計結果について【内閣府調査】)

このデータから、私立保育園に比べて公立保育園の方が月収・年収ともに高いのが分かります。公立の保育園の保育士は地方公務員となり、給料は各自治体が定める「地方公務員/一般行政職」の給料で算出され、職務経験に応じて一定の年齢まで毎年給料が上がる仕組みになっています。一方、私立保育園では企業などの各運営母体が運営を行っています。人件費・設備投資費などは、運営資金から捻出されます。運営資金が増えれば保育士の給料も上がるという構造ですが、運営資金を増やすことは構造上不可能です。そのため、保育士の勤続年数に基づいた昇給はほとんどないようです。また、保育士の平均勤続年数が10年未満と非常に短期間であるのも保育士の低賃金の原因でもあります。

保育士の役職別の給料差

保育士の役職は一般企業に比べると少ない傾向があります。基本的には一般職員、主任、副園長、園長という4つの役職で構成。クラス担任の1つ上、主任の月収は私立保育園でおよそ36.7万円、公立保育園でおよそ51.9万円となっていて、ここにも公立と私立の差があります。現在では新しい制度が始まった関係で、新たな役職が追加されることとなりました。しかし、まだその役職が未導入で旧体制を取っている保育園が多数を占めています。

 保育士の年代別平均月収・年収・ボーナス

年代平均月収平均ボーナス平均年収
2021万円48万円303万円
3024万円77万円371万円
4028万円89万円432万円

(出典:平成26年度 厚生労働省 賃金構造基本統計調査)

上記が年代別の平均月収・ボーナス・年収です。保育士は20代のうちは多職種と比較しても大きな差はありません。しかし、先にも挙げた理由の通り昇給が緩やかです。そのため、長く働くほど多職種との給料の差は開いていき、私立保育園ではその差が特に顕著になります。私立保育園では年を重ねるほどに、給料と仕事内容が釣り合わないと感じることが多くなっていきそうです。

 保育士の給料が上がりづらい理由は?

先ほどのとおり公立保育園では地方公務員として給料は上がっていきますが、私立保育園は運営の構造上、保育士の給料を上げるのが難しくなっています。公立保育園の保育士の給料は多職種と大きな差はありませんが、私立保育園の保育士の給料が上がらないことが保育士全体の平均給料を下げる要因となっています。私立保育園の運営の構造については、次の章で詳しく説明していきます。

 運営費の構造と処遇改善の取り組み

私立保育園の保育士の給料が上がりづらい原因は、私立保育園の運営構造にあります。ここでは認可保育園を取り上げて解説していきます。

認可保育園の場合、メインの収入源は補助金と保育料です。補助金は国や自治体から支給される税金ですが、現時点で大幅な増額は制度上見込めません。保育料は、園児一人当たりの「公定価格」が決められているため、保育園が勝手に増額することはできないのです。園児の人数や年齢、保育士の人数によって補助金も設定されていますが、これも保育園側で額を設定することは不可能です。保育士一人当たりの受け持ちの園児数も上限が設定されているため、一人当たりの保育士が受け持つ園児を増やして補助金を受け取るということもできません。つまり、保育園を運営するための収入がほぼ固定化されているため、保育士への給料を上げたくても上げられないというのが現在の私立保育園の現状なのです。

現在、国が予算を組んで保育士の対偶改善に取り組んでいます。取り組みを開始した2013年度から現在までに、月額4.1万円の給料改善が行われました。しかし、まだ保育士の給料問題の解消には至っていません。

保育士が給料を上げるためにできることは?

なかなか給料が上がらない保育士。しかし、給料を上げるための方法がないわけではありません。新設された役職に就くだけ、働き方を変えるだけで給料の増額が見込めることがあるのです。その方法を4つ紹介していきます。

給料アップの方法1:保育士等キャリアアップ研修を受講する

保育士等キャリアアップ研修とは、保育士経験がおおむね3年以上の人を対象とした、昇格・処遇改善のための研修制度です。これまではクラス担任の次はいきなり主任、副園長、園長と昇格していましたが、クラス担任と主任の間に新しい役職が追加されました。保育園によって名称が異なる場合がありますが、「職部分野別リーダー」、「専任リーダー」、「副主任保育士」の3種類の役職が追加されました。この保育士等キャリアアップ研修を受けて役職に就くと、最大で月4万円の手当が国や自治体から支給されます。職務分野別リーダーは、8種の分野に分けられます。

  1. 乳児保育 乳児への適切な関わり、保育環境を学ぶ
  2. 幼児教育 幼児の発達に応じた教育や環境を学ぶ
  3. 障害児保育 障害への理解、保育環境について学ぶ
  4. 食育・アレルギー対応 食育やアレルギーへの正しい知識を学ぶ
  5. 保健衛生・安全対策 保険計画や事故・病気感染防止を学ぶ
  6. 保護者支援・子育て支援 保護者支援の方法や地域ごとの支援を学ぶ
  7. マネジメント リーダーシップや人材育成などマネジメントを学ぶ
  8. 保育実践 子どもに対する理解を深め、実戦的な保育を身につける

これらの中から自分に合った分野を選んで受講することで、その分野の職務リーダーになることができます。また、現役の保育士のうちのおよそ半数がこの研修を知らなかったあるいは受けるつもりがないというデータがあります。保育士等キャリアアップ研修を受けるだけで保育園の中でも重宝される人材になれるでしょう。

給料アップの方法2:資格を取得する

保育士は国家資格ですが、保育士のほかに資格を取得するのがおすすめです。資格を取得したからと言って、すぐに待遇が改善されるわけではありません。しかし、保育士等キャリアアップ研修を受講して役職に就くには、資格を持っていると有利です。さらに、ほかの地域や他職として働きたい際には保育士+αの資格を持っていると転職が有利に進みます。

資格1:幼稚園教諭免許

平成27年度から、幼稚園と保育園が統合した認定こども園が増えてきています。認定こども園で働く「保育教諭」になるためには、保育士資格とあわせて幼稚園教諭の免許が必要です。通常、幼稚園教諭になるには、大学や短大に通う必要があります。しかし、この認定こども園の新設に伴い条件を満たした保育士は指定された8単位の取得で幼稚園教諭の免許を取得することができる特例制度ができました。現在この特例制度に対応した通信制プログラムを設けている大学が全国にあります。あまり時間のない保育士でも簡単に勉強できます。

資格2:TOEIC

英語学習が早期化する中、英会話に力を入れている保育園が増えてきました。また、社会全体のグローバル化に伴って外国出身の保護者も増えてきています。園児への教育や保護者とのコミュニケーションに英語のスキルが求められる時代になったのです。特に保育士の平均給料が高い東京・京都・愛知などではさらに英語教育が重視されるようになる可能性が高いようです。都市部の保育園への転職を希望する場合は、取得しておくのがおすすめの資格です。

資格3:社会福祉士

社会福祉士は、生涯を持つ人や被虐待児、子育てに悩みを抱える人の生活を支援する専門職です。現代の日本では問題を抱える家庭が増加し、子供の心のケアや保護者へのアドバイスが行える保育士のニーズが高まっています。保育士とセットで取得することの多い国家資格です。保育士とセットで取得してあると、働ける施設が増え、将来転職を考える時に幅広い施設から転職先を選べるのは魅力的です。児童相談所や母子福祉センターなどの公的機関で働くのにも必須の資格です。

給料アップの方法3:給料の高い施設や他県への転職

保育士という資格を生かして給料をアップさせたい場合、ほかの施設への転職や給料の高い地域の保育園への転職があります。保育士の転職先として多い職場や転職のメリット、どんな業務を行うのかをまとめていきます。

転職先1:他県の保育園への転職

保育士の給料は、公務員の給料あるいは公定価格で差が出ます。保育園で働きたい場合の最も簡単な給料増加の方法としては、公務員の給料や公定価格の高い地域に移る方法があります。保育園によって仕事の進め方に違いはあるものの、保育を行うという点で大きな違いはありません。引っ越しに抵抗がなければ、転職としての難易度はかなり低いでしょう。転職前に、転職希望先の保育園の特色をよく調べ、それに合わせた資格を取得すると転職の成功確率は格段に上がることでしょう。

転職先2:給料の高い施設への転職

保育士という資格を生かして、保育園以外の場所で働くことも可能です。児童養護施設や児童相談所、児童福祉施設など、さまざまな場所で保育士の資格を持った人が活躍しています。公立の施設では地方公務員として働くことになるため、私立保育園に勤務している人は大幅な給料アップの可能性があります。施設によっては持ち帰りの仕事がないところもあるため、保育園に勤務するより身体的な負担が減るケースもあります。男性保育士は、保育園での女児の着替えや排せつの介助などに保護者が心配の声があがることもあったでしょう。しかし、学童保育などの生活介助の必要がない施設では、男性保育士が働きやすい環境がそろっていることも珍しくありません。給料のアップだけではなく、ほかの面でも転職によって良い効果を得られる可能性が高いのが他職への転職です。

給料アップの方法4:手当や補助を利用する

現在、国内では保育士不足や待機児童問題を解消するために、自治体が様々な取り組みを行っています。保育士家賃補助制度や保育士専用宿舎の借り上げ、就学資金の貸し付けや給与の上乗せなど、自治体によって制度は異なります。
同じ都道府県内でも地区によって制度の内容に違いがあったり、補助や手当の額が異なる場合があります。働き始める前や転職の際には、一度近隣の自治体の制度を見比べて就職先を選ぶだけで、収入や支出に大きな差が出る可能性があります。積極的に、保育士を対象とした手当や補助について調べてみましょう。

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