臨床工学技士という職業を知っていますか?
聞いたことがあるという方もいるかと思いますが、実際の仕事内容などの詳しいことをなんとなくしか知らない方、全く知らない方が多いと思います。
本記事では、臨床検査技師の仕事内容や資格の取り方、やりがい、年収についてなど、詳しく解説していきます。
臨床工学技士とは?
臨床工学技士は、医療機器のスペシャリストと呼ばれていて、病院内で医師や看護師などとチームを組み、生命維持装置の操作などを行います。
医療機器をいつでも安心して使用できるように、メンテナンスも行っていて、患者さんの命を守るために必要不可欠な職業です。
詳細は後ほどまとめていますが、輸血ポンプや人工呼吸器、AEDなどのメンテナンス、人工透析業務やペースメーカ業務など様々です。
臨床工学技士は厚生労働省で定められた国家資格で、以下のように定義されています。
「厚生労働大臣の免許を受けて、臨床工学技士の名称を用いて、医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作(生命維持管理装置の先端部の身体への接続又は身体からの除去であつて政令で定めるものを含む。以下同じ。)及び保守点検を行うことを業とする者をいう。」
臨床工学技士の就職先は様々な病院や透析クリニック、医療機器メーカーや商社など豊富にあり、就職率はほぼ100%の職業です。
臨床工学技士の資格を取るには
臨床工学技士の資格を取るには、国家試験を受ける必要があります。
しかし、まず国家試験を受ける受験資格を得なければなりません。
高校卒業→臨床工学科がある大学(4年)→卒業
高校卒業→臨床工学技士を養成する専門学校(3年)→卒業
この2つのどちらかのルートをたどると、臨床工学技士の国家試験の受験資格を獲得できます。
また、すでに看護師や臨床検査技師の資格を取得している場合は通常より短く、1年制の専攻科に通うと、臨床工学技士の国家試験受験資格を獲得できます。
しかし、それらの資格を持っておらず、臨床工学技士に転職するという場合は、大学か専門学校に通う必要があります。
少しでも早く臨床工学技士になりたいという方は、3年制の専門学校を選びましょう。
看護師、臨床検査技士については以下参考にしてください。
看護師の資格とは?資格の取り方から仕事内容・年収、やりがい等を簡単に解説!
臨床検査技士の資格とは?資格の取り方から仕事内容・年収、やりがい等を簡単に解説!
第33回臨床工学技士国家試験(令和2年)の試験概要は以下の通りです。
実施日 | 令和2年3月1日(日曜日) |
受験料 | 30,800円 |
試験地 | 北海道、東京都、大阪府及び福岡県 |
試験方式 | マークシート方式 |
問題数 | 180問 |
科目 | 医学概論(公衆衛生学、人の構造及び機能、病理学概論及び関係法規を含む。)、臨床医学総論(臨床生理学、臨床生化学、臨床免疫学及び臨床薬理学を含む。)、医用電気電子工学(情報処理工学を含む。)、医用機械工学、生体物性材料工学、生体機能代行装置学、医用治療機器学、生体計測装置学及び医用機器安全管理学 |
合格基準 | 180点満点中108点以上の者(正答率60%以上) ※満点は年によって変動あり |
以下、ここ数年の臨床工学技師国家試験の合格率です。
第32回(2019年) | 77.5% |
第31回(2018年) | 73.7% |
第30回(2017年) | 81.9% |
第29回(2016年) | 72.5% |
第28回(2015年) | 83.2% |
年によって合格率に変動はありますが、だいたい平均して77%ほどの合格率です。
他の医療系の国家試験の合格率は、以下の通りです。
医師:約90%
看護師:約90%
薬剤師:約70%
理学療法士:約81%
合格率だけで比較してみると、臨床工学技士の国家試験はやや難易度が高めのように見えますね。
ですが、合格率は新卒や既卒を含めた数値で、新卒の合格率は高く、既卒の合格率は新卒より低い傾向にあります。
合格率で難易度を判断するのは難しいですが、参考にしてみてください。
臨床工学技士の仕事内容
臨床工学技士は、医師の指示のもと、生命維持管理装置の操作や、医療機器の保守点検を行う職業です。
臨床工学技士が扱い医療機器は、心臓ペースメーカや人工透析装置、人工心肺装置など様々。
患者さんの命に係わる医療機器を扱う仕事なので、慎重に正確に行うことが求められ、責任重大です。
最新の医療機器もどんどん増えていくため、特殊な構造のものであっても、使いこなすための知識や技術も必要になります。
臨床工学技士が扱う医療機器は以下のようなものがあります。
- NO療法機器
- 人工呼吸器
- 対外循環装置
- 人工透析装置
- 植込み型除細動器
- 体外式ペースメーカ
- 自己血回収装置
- 麻酔器
- 輸血ポンプ
- 高気圧酸素装置
- 対外設置型補助人工心臓装置
- 持続透析装置
これらを安全に使えるように保守点検を行い、手術時には操作をしたり、数値を医師に伝えたりもします。
臨床工学技士は患者さんと話さない仕事かと思われがちですが、患者さんとのコミュニケーションをとる機会もありますし、重要な仕事の一つです。
例えば、透析業務を行う際に患者さんとコミュニケーションを取ることが求められます。
不安な患者さんをリラックスさせて、安心させるために、コミュニケーションを取ることが大切です。
そのコミュニケーションから、患者さんの体調の変化も見抜くことができるため、臨床工学技士として、患者さんとのコミュニケーションは必要不可欠です
臨床工学技士の就職先
臨床工学技士の就職先は、総合病院や国立病院、大学病院などの病院や透析クリニックなどの医療機関や、医療機器メーカーや商社の一般企業など様々です。
最も求人が多いのが病院で、ほとんどの場合は、病院などの医療機関で働く場合が多いです。
- 病院:最も求人が多い就職先。医療機器の操作、保守点検を行います。
- 透析クリニック:人工透析装置の操作や保守点検を行います。
- 医療機器メーカーや商社:医療機器の製造開発に携わります。営業のサポートとして、医療機器の使い方やメンテナンス方法を医療機関に説明する業務です。(アプリケーションスペシャリスト)
- NGO:派遣先の現地で医療機器の操作や保守点検を行います。
臨床工学技士のやりがい
臨床工学技士は、人の健康や命にかかわる重要な職業です。
責任も大きいですが、その分やりがいを感じることができます。
患者さんの命や健康を守ることができること
臨床工学技士は、人工心肺や心臓ペースメーカなど、患者さんの命や健康にかかわる医療機器を扱う仕事です。
医療機器の操作や点検などの管理を適切に正しく行うことで、患者さんの命や健康を守ることができます。
医療機器がなければ患者さんの命を救えないこともあるため、その操作や点検をする臨床工学技士はかなり重要な存在。
患者さんの命や健康にかかわることができるのは、臨床工学技士として大きなやりがいを感じることができます。
チーム医療の一員として医療にかかわることができる
臨床工学技士は、手術室でも医師や看護師と一緒に手術にかかわります。
緊張感のある中でチーム医療に参加し、チーム全員で手術を行うので、臨床工学技士もかなり重要な役割を持っています。
そんな緊張感と責任を抱えた中で、自分の仕事をしっかりとミスなく行い、手術も成功すると、チームとしてのやりがいを感じることができます。
医療機器のプロとして頼られる
臨床工学技士は医療機器のプロとして周りから頼られることもあり、やりがいを感じます。
特に、医療機器の進歩が著しい中で、最新の医療機器を扱うことができるのは、臨床工学技士しかいません。
そのため、医療機器操作について聞かれたり、指導的な役割を担ったりすることもあります。
自分がコツコツ培った知識によって、周囲から頼られて、知識を教えることは、大きなやりがいになりますね。
臨床工学技士の平均年収
臨床工学技士の平均年収は、約430万円です。
ですが、平均年収は年齢や就職先によっても変わります。
年齢別で算出した場合、年齢が上がると、平均年収も上がることがわかりました。
20代 | 340.4万円 |
30代 | 453万円 |
40代 | 492万円 |
50代 | 564万円 |
60代 | 800万円 |
勤務先の企業規模での平均年収は、大規模と中規模の場合、あまり差はありませんが、小規模の場合の平均年収は低めになってしまうことがわかりました。
1000人以上の大規模 | 約442万円 |
1000人未満100人以上の中規模 | 約454万円 |
100人未満の小規模 | 約409万円 |
自分が働きたい仕事内容はもちろんですが、収入面も考慮して就職先を選びましょう。
臨床工学技士の将来性
臨床工学技士の将来性はあります。
現在も臨床工学技士の需要は高いですが、今後もさらに需要が高まることが予想されている職業です。
臨床工学技士の現状
まず、臨床工学技士の現状について説明します。
現在、臨床工学技士は需要が高い職業です。
その理由は、臨床工学技士は1988年の臨床工学技士法の施行によってスタートしたため、他の職種と比べてまだ数が少ないからです。
臨床工学技士の数が少ないのにも関わらず、医療機器の進歩はどんどん進み、医療機器の点検保守がさらに必要になってきているため、需要は高まっています。
臨床工学技士は将来性のある職業
臨床工学技士は、今後もさらに需要が高まっていくことが予想されるので、将来性のある職業といえます。
なぜなら、先ほども説明したように、医療機器の進歩は今後も進んでいくからです。
新たに知識を習得したり、技術を磨いたりすることが必要になってきます。
主に、病院での需要が今後も高まっていくでしょう。
病院での需要に加えて、災害現場でも臨床工学技士の需要は高まっていきます。
災害時の医療派遣チーム「DMAT」の一員として、臨床工学技士が重要です。
DMATとは、災害や事故が起きた際に、その地域へ向かって仕事をする医療チームのことで、医師などの医療職の中に、臨床工学技士が含まれます。
仕事内容は同じように医療機器の確認をすることで、今後もさらに需要が増えていきます。
臨床工学技士は医療に需要な存在!
臨床工学技士は、医療機器のプロとして、医療機器の操作や保守点検を行う仕事です。
臨床工学技士の医療機器の操作や保守点検は、患者さんの命や健康にもたらす影響は大きく、重要な仕事です。
そのため、責任も大きいですが、その分やりがいを感じることも多いです。
現在も需要はかなりありますが、今後はさらに需要が増えていくことが予想され、就職先も様々です。
人の命や健康を守る仕事がしたい方、専門性を活かす仕事がしたい方、やりがいの大きい仕事がしたい方は、臨床工学技士を目指してみてはいかがでしょうか。