栄養のスペシャリストとして人気の職業、栄養士。
みなさんは、栄養士の仕事内容や管理栄養士との違いを知っているでしょうか?ここでは、栄養士の資格の取り方、仕事内容や管理栄養士との違い、なり方、年収について解説していきます。
栄養士とは?
栄養士とは、主に健康な人を対象とし、栄養学に基づいて食事の提供や栄養指導を行う職業です。病院や介護施設、児童福祉施設、小中学校、企業などで献立の作成や調理方法の改善、栄養相談の対応などを担当します。国家資格の一つですが、資格試験はなく指定の養成施設を卒業することで取得できます。
現在世界各国に存在する栄養士ですが、実は初めて誕生したのは日本。その歴史は古く、1926年に「栄養手」と呼ばれる人が世に出たことが始まりです。当時は栄養不足の人が多かったため、国民の食生活を改善する目的で誕生しました。
厚生労働省の調査によると、2015年までに累計約104万人の栄養士が誕生しています。飽食と言われる現代では、生活習慣病の増加や食品ロスなど新たな問題が増え栄養士の働き方も多様化しています。
栄養士の資格を取るには
栄養士は都道府県知事の免許を受けた国家資格です。国家資格と言っても資格試験はなく、指定の養成施設を卒業することで取得できます。
養成施設には栄養士養成施設と管理栄養士養成施設がありますが、どちらを卒業しても栄養士の資格を取得できます。厚生労働省によると、2017年時点では全国に栄養士養成施設は約160校、管理栄養士養成施設は約140校あります。
全国栄養士養成施設協会のホームページから養成施設を検索することができるので、気になる人はチェックしてみましょう!
一般社団法人全国栄養士養成施設協会
管理栄養士との違いとは?
管理栄養士になるためには栄養士の資格を持った上で国家試験に合格しなければなりません。つまり、管理栄養士は栄養士の上位資格ということです。
両者はどちらも個人や集団に対して食事や栄養の指導をする仕事ですが、管理栄養士の方が業務範囲は広くより高度な専門知識を必要とします。
<栄養士と管理栄養士の違い>
栄養士 | 管理栄養士 | |
対象 | 健康な人 | 健康な人、傷病者、高齢者など |
仕事内容 | 集団給食の献立作成や調理方法の改善、保健センターなどでの栄養相談など | 栄養士の仕事に加え、傷病者の療養を目的としたより高度な栄養指導や食事管理 |
栄養士は主に不特定多数の人に食事を提供する場所で働きますが、管理栄養士は医療現場や高齢者施設など一人ひとりに特別な配慮が必要な場所で活躍します。管理栄養士は国家試験に合格する必要があることから、より高度な栄養指導が求められその分栄養士よりも給料は高く設定されています。
栄養士については以下参考にしてください。
栄養士の資格とは?資格の取り方から仕事内容・年収、やりがい等を簡単に解説!
栄養士の仕事内容
職場によって少しずつ異なりますが、栄養士の仕事内容は主に食事の管理と提供、栄養指導です。対象者の年齢や環境に合わせてカロリー計算や献立の作成、食材の発注、衛生管理、栄養指導を行います。
学校給食の提供
小中学校や給食センターなどでは、カロリー計算や献立作成、調理方法の検討、食材発注、調理、衛生管理などを行います。学校給食では、子どもが健全に成長するような栄養価を持ち、食べる喜びを感じられるメニューが求められます。
また、残量のチェックや献立の反省をすることで次の献立に活かす、より効率的かつ衛生的な調理方法を実践するといった改善活動も必要です。
食堂での食事の提供
企業や大学などの食堂で食事を提供するのも栄養士の仕事。集団の健康や好みに合わせた献立の作成、食材発注、調理全般を担当します。食堂利用者はほとんどが健康な大人であるため医療機関ほど病気に関する知識は求められませんが、生活習慣病の予防や健康維持に関する知識が必要となります。
病院や福祉施設での食事の提供
病院や福祉施設では、患者さんや利用者さんに合わせた食事の提供が求められます。術後の回復や療養を目的とした食事、特別配慮が必要な人への食事管理は管理栄養士が行い、不特定多数の人へ提供する食事の準備を栄養士が担当することが多いです。
食育指導
2005年に制定された食育基本法では、栄養士は食育の推進に努めることが求められるようになりました。食育とは、食に関する正しい知識や選択方法を身に付け、健康な食生活を目指すための教育です。学校や幼稚園、保育園などで食育教室を実施したり、給食だよりを発行したり、保護者と連携しアレルギー対応への取り組みなどを行います。
栄養指導
保健所や保健センターなどでは、地域住民が健康な生活を維持できるように、適切な栄養や食事方法の指導を行います。健康な人であっても年齢や職業、体質、妊娠しているかどうかなどの違いによって必要な栄養価やカロリーは変わってくるので、対象者に合わせた指導をする能力が求められます。
栄養士の就職先
栄養士は、健康志向の高まりや食育の普及などにより活躍の場所が拡大しています。全国栄養士養成施設協会によると、2017年の栄養士養成施設卒業者の就職先は次のようになっています。
最も多いのは病院で24.3%、次いで児童福祉施設、事業所、介護保険施設となっています。
病院は管理栄養士の就職先としても最も多い場所ですが、栄養士は不特定多数の患者さんへの食事の準備、管理栄養士はより高度な食事管理が必要な患者さんへの対応といったように仕事内容が分かれている場合が多いです。
また、近年では健康志向のレストランやスポーツジム、食品メーカーへの就職も人気が高まっています。
栄養士のやりがい
栄養士は主に健康な人を対象とし、健全な成長や病気の予防を目的とする仕事。そのため、明確な回復が見えづらいという側面があります。しかし、毎日を元気に暮らすために必要不可欠な食をサポートすることは、人の人生を支えることにも繋がります。
食を通して人に元気を与えられる
入院中の患者さんや介護施設の利用者さんの中には、体が不自由で食べることが一番の楽しみという人も少なくありません。学校では毎日給食を待ちわびている子どももいます。
栄養士は、食事をなによりも楽しみにしている人に対しておいしい食事を提供することで、人を元気にすることができる仕事です。食べた人の笑顔や「おいしかった!」という言葉は、栄養士として働く上で大きなやりがいとなるでしょう。
管理栄養士へのステップアップ
栄養士としての経験を活かし、管理栄養士としてキャリアアップすることも可能です。管理栄養士になれば、治療の一環としての栄養指導や特別な配慮が必要な人への食事提供などより高度な仕事を担当することができます。
栄養士の資格や実務経験があれば管理栄養士の国家試験を受けることができるので、やりがいを感じ、キャリアアップに向けてモチベーションを維持することができるでしょう。
栄養士の平均年収
厚生労働省の調査によると、2016年の栄養士の年収は35歳、勤続年数7年で345万円となっています。月収にすると23.8万円、年間賞与は59.5万円でした。
日本の平均年収と比較すると低めの数値になっていますが、勤続年数が長くなれば年収400万円を超えることもあります。
上位資格の管理栄養士は栄養士よりも月収が5,000~10,000円高いことが多いため、高収入を狙うなら管理栄養士へのステップアップを考えておいた方が良いでしょう。
厚生労働省労働統計要覧
栄養士の将来性
高齢化による介護施設の増加、人々の健康意識の高まり、食育の普及、アレルギーを持つ子どもの増加といった社会的背景から、栄養士の働き方はどんどん多様化しています。近年ではスポーツジムや美容サロンのスタッフ、食品加工メーカーの開発担当として働く人も増えました。
このようなフィールドの拡大に加え、利用者ニーズの多様化も進んでいます。一般的な食事の提供業務だけでなく、対象者のニーズや価値観に合ったきめ細やかな対応が求められるため、栄養の知識だけでなくコミュニケーション能力や問題解決能力も重要になってくるでしょう。
ただし、栄養分野への関心が高まる一方で、より高度な専門知識を持った管理栄養士を求める現場も多くあります。仕事の選択肢を広げ専門的な業務に携わりたいならば、管理栄養士へのキャリアアップを考えておく必要があるでしょう。
栄養士を目指すなら管理栄養士へのキャリアアップも考えよう
栄養士は病院や学校、福祉施設などで栄養学に基づいた食事の提供や栄養相談を行う仕事。国家資格ではありますが、資格試験はなく指定の養成施設を卒業することで取得できます。
管理栄養士との違いは対象者と目的です。傷病人の回復や食事が難しい人への個別の栄養指導や食事管理を行う管理栄養士に対し、栄養士は健康な人を対象とし給食や食堂などでの大量提供が基本です。
さまざまな就職先がある栄養士ですが、管理栄養士と比べると活躍の場は限られてしまいます。栄養士を目指すならば、管理栄養士へのキャリアアップも視野に入れておきましょう。
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