皆さんは視能訓練士という職業をご存じでしょうか?
視能訓練士とは、人の一生に関わる目の健康を管理する国家資格の職業です。
今回は、視能訓練士の仕事内容やなり方、就職先、やりがい、年収について解説していきます。視能訓練士に少しでも興味のある人はぜひ参考にしてください!
視能訓練士とは?
視能訓練士とは、病院や診療所などの医療機関で、目に障害を持つ人に対して目の検査や矯正訓練を行う専門科です。英語ではCertified Orthoptist (CO)と呼び、日本では1971年に国家資格として誕生しました。1971年以降、視能訓練士の数は右肩上がりで増加しており、2019年3月時点では16,199人が視能訓練士として活躍しています。
視能訓練士は、かつて乳幼児に対する検査を主としてきました。しかし、現代社会ではパソコンやスマートフォン、ゲームなどの普及によって目を酷使する機会が増え、視力の低下や目の不調に悩む人も増えてきました。さらに高齢化による低視力者の増加も重なって、視能訓練士は子どもから高齢者まで幅広い年代を対象とする職業へと変化しつつあります。コンタクトやレーシック手術などの矯正技術も進化したこともあり、今後ますます重要性の増す職業であると言えるでしょう。
視能訓練士の資格をとるには
視能訓練士になるためには、国家試験に合格しなければなりません。
そして、国家試験を受験するには一定の条件を満たす必要があります。
視能訓練士国家試験の受験資格
国家試験の受験資格を得るためには、以下の3つのルートがあります。
①視能訓練士養成所を卒業
指定された視能訓練士養成施設で3年以上修学し、必要な知識や技術を修得する。3年制の専門学校に入学するのが最短ルート。
②短大卒以上で、視能訓練士養成所(1年以上)に修業
大学、短大、または看護師や保育士の養成機関で指定の科目を履修した後、指定の視能訓練士養成校で1年以上修学する。
③外国の視能訓練士の学校を卒業
外国の視能訓練士の学校を卒業、または外国で視能訓練士の免許に相当する免許を取得後、厚生労働大臣に認定される。
視能訓練士国家試験の概要
<視能訓練士国家試験>(2020年1年時点の情報)
試験日程 | 毎年2月 |
試験会場 | 東京都、大阪府 |
受験料 | 15,800円 |
試験科目 | 基礎医学大要、基礎視能矯正学、視能検査学、視能障害学、視能訓練学 |
合格基準 | おおむね60%以上の正答率 |
合格率 | 95%前後 |
視能訓練士国家試験は毎年900人前後が受験していますが、受験者数は看護師や保健師と比べて少なく、受験会場も東京、大阪の2か所のみとなっています。
地方に住んでいる場合、泊まり込みで受験に臨むことになるのでしっかりと準備しておきましょう。
出典:厚生労働省 資格・試験情報
視能訓練士の仕事内容
視能訓練士は、病院や診療所などに勤務し、医師と連携して視能障害を治療するための検査や光学機器を用いた矯正訓練を行います。
弱視や斜視などの目の障害は長期間にわたる治療や訓練を必要とするため、患者さんの年齢や生活に合わせた手段を選択しなければなりません。
視能矯正
視覚の発達に問題のある子供に対して目の検査を行い、弱視や斜視、眼筋麻痺の症状の改善や両眼視機能の獲得のための視能訓練を行います。
弱視や斜視などは放置すると視力の回復が難しくなることがあるため、適切な訓練を行い負担を抑えながら視力確保を目指します。
<例>
- 両眼視能検査
- 眼筋機能検査
- 斜視訓練
- 弱視訓練
- 精密屈折検査
視機能検査
目の検査と言っても一般的な視力検査、眼鏡やコンタクトの処方だけではありません。
目の奥の写真撮影や手術前の特殊検査など、さまざまな検査を担当します。
<例>
- 屈折検査
- 画像診断検査
- 眼圧検査
- 超音波検査
- 角膜形状検査
健診
母子保健センターなどで行われる3歳児健診や就学時健診、生活習慣病健診などに参加します。
目の病気は早期発見・早期治療が重要であるため、視能訓練士は健診を通して患者さんの目の健康を守る役割を担っています。
<例>
- 3歳児健診
- 就学時健診
- 生活習慣病健診
ロービジョンケア
ロービジョンとは目の病気やケガにより目の機能が低下した状態のこと。
ロービジョンにより生活の質(Quality of Life)が低下した患者さんに対して、ひとりひとりに合わせた補助具の選定やリハビリを行います。子どもから高齢者まで幅広い年代の患者さんを対象とし、学業や仕事、日常生活をスムーズに行うことを目的とします。
<例>
- 拡大鏡、遮光眼鏡などの補助具の選定
- 視覚リハビリテーション施設との連携
- 日常生活へ工夫のアドバイス
視能訓練士の就職先
視能訓練士実態調査報告書(2015年)によると、視能訓練士の就職先は約95%を病院や診療所などの医療機関が占めています。
大型病院では、眼科以外の科とも連携しながらさまざまな症例に対応するため、幅広い経験を積むことができます。一方、小規模な診療所では矯正訓練、小児眼科など特定分野に特化している場合も多く、仕事を通して専門性を高めることができるでしょう。
医療機関以外では、大学の研究機関や視能訓練士養成校、リハビリセンターなどに就職する人もいます。近年では高齢化や目の疾患の増加に伴い視能訓練士の需要が高まっているため、就職先に困ることはほぼないでしょう。
出典:視能訓練士実態調査報告書(2015年)
http://www.jaco.or.jp/wp-content/themes/jaco_renew/assets/pdf/2015survey.pdf
視能訓練士のやりがい
目の健康を守る専門家である視能訓練士。
実際に視能訓練士として働くにあたっては、どんなやりがいがあるのでしょうか?
目のエキスパートになれる
私たち人間は目から入る情報が80%以上であると言われています。視能訓練士は、人間にとって最も大切な感覚器官を守るエキスパート。目の健康を通して人の人生を支えることができます。人の役に立っているという実感は、仕事の大きなやりがいとなるでしょう。
患者さんの回復しをも守ることができる
目の病気には長期的な治療や訓練が必要な場合もあります。長期的に患者さんを支えて回復を実感できたときには、大きな喜び・やりがいを感じることができるでしょう。
また、弱視や斜視は幼少期に治療を行うことが多いので、子どもと関わりたい人にとってもやりがいを感じられる仕事です。
視能訓練士の平均年収
視能訓練士実態調査報告書(2015年)によると、視能訓練士の平均年収は正規職員で約405万円、非正規職員で約216万円となっています。
勤務場所別に見ると、「私立大学病院」が495万円でもっとも高く、次いで「公立大学病院」が467万円、「公立医療機関」が450万円となっています。
非正規職員の場合、平均時給は1,846円となっており、一般的なパート雇用者と比べると高い水準であることが分かります。
参考:視能訓練士実態調査報告書(2015年)
http://www.jaco.or.jp/wp-content/themes/jaco_renew/assets/pdf/2015survey.pdf
視能訓練士の男女比
視能訓練士実態調査報告書(2015年)によると、視能訓練士の男女比は2015年時点で以下となっています。
- 86.8%:女性
- 13.2%:男性
1995年の調査では男性視能訓練士は3.5%にとどまっていましたが、その割合は徐々に増えてきています。まだまだ女性の多い視能訓練士ですが、今後さまざまな場面で男性視能訓練士の活躍が期待されています。
視能訓練士の将来性
昨今、以下のような理由により視能訓練士の需要はどんどん拡大しています。
- 高齢化による低視力者の増加
- スマートフォンやパソコン、ゲームの普及による目の酷使
- コンタクト装着率の増加
目の病気や不調を持つ人の増加に加え、医療技術の進歩に伴う新機器の導入などにより、人手不足の医療現場もあるようです。今後しばらくは就職先に困らない可能性が高いでしょう。
視能訓練士は目の健康を通して人生を支える国家資格の仕事
視能訓練士は病院や診療所などで、目に障害を持つ人に対して目の検査や矯正訓練を行う国家資格の職業です。視能訓練士の国家試験を受けるための最短ルートは、高校卒業後に指定の専門学校に入学することですが、他にも進路の選択肢があります。
スマートフォンやパソコン、ゲームの普及によって目を酷使する機会が増え、高齢化も進む昨今では、視能訓練士の需要はどんどん高まっています。目の健康を通して人の役に立ちたい、子どもと関わりたいという人は、視能訓練士を目指してみてはいかがでしょうか?